サマセット・モーム著『かみそりの刃』は自分探しをする人にオススメ------アノヒトの読書遍歴:ロバート・ハリスさん(後編) 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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サマセット・モーム著『かみそりの刃』は自分探しをする人にオススメ------アノヒトの読書遍歴:ロバート・ハリスさん(後編)

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作家、ラジオ・ナビゲーターとして活躍するロバート・ハリスさん。これまでに15冊以上の著作がありますが、2018年9月に自身初の長編小説『JJ 横浜ダイアリーズ』を出版しました。本はじっくり読みたい派というハリスさんに、前回に引き続き日頃の読書生活についてお話を伺いました。


------ハリスさんといえば「旅」というイメージがありますが、おすすめの一冊があれば教えてください!

「東山彰良さんの『流(りゅう)』です。僕は東山さんと個人的にも友達で、日本にお住まいなんですが、台湾生まれの方なんです。この話の舞台は1975年以降の台湾で、そのカオスも非常によく描かれています。ここ数年読んだ本の中で一番面白かったですね」


------具体的にはどんな内容が書かれているのでしょうか?

「メインのストーリーラインは主人公の祖父が殺されてその犯人を突き止めるミステリーなんですが、そこには重層的に青春ドラマとかが織り交ぜられています。主人公が17歳の年齢からどんどん大きくなっていくなかで、カラフルな家族の肖像とか、台湾の裏道でおじいさんおばあさんが麻雀をやっているシーンとか、日中戦争とか国共戦争といった過去の血生臭い内戦の話も織り交ぜられるし、ヤクザとのトラブルとか非常に切ない初恋の物語とか、陸軍士官学校で酷い目に合うとかも......。さらにそこに霊気とか鬼火とか狐様とかコックリさんとか幽霊とかゴキブリの大群とか、マジックリアリズム的な要素も入ってくるんです。でも全体的にストーリーとして一貫していて『これはちょっと信じられないよ』というところが無いんです。どんどん面白くなっていきますね」

------どんな人におすすめですか?

「それこそ僕くらいの60代から70代の人ももちろんそうなんですけど、若い人が読んでもすごく面白いと思います。どういう展開になっていくかほとんどわからないような物語で、誰が読んでも本当に引き込まれて面白いと思います。あとは旅をしながら読むといいんじゃないかな。特に東南アジアなんかを旅しながら読むと、いまも東南アジアはエネルギーがあるし、カオスじゃないですか。まさにこの本がそうなのでちょうどいいかもしれないですね」


------ほかにもオススメの一冊があれば教えてください。

「サマセット・モームの『かみそりの刃』という作品。古典ですね。サマセット・モームと言えば『月と六ペンス』とか『人間の絆』で有名なんですけど、これは作家が69歳から70歳にかけて書いた晩年の小説なんです。小説の中の舞台は第一次大戦が終わったちょっと後の話ですが、彼がこの作品を書いたのも1942年という第二次大戦の真っ只中でした」


------どういったところに共感しましたか?

「主人公が裕福な家の青年で、空軍のパイロットなんですね。まだ17歳くらいのときに第一次大戦でヨーロッパ前線に行って、友達が自分を助けて死んでしまうんです。そこで自分の人生観とか価値観が全部変わって帰ってくると、周りの人から『これから君はもうビジネスの世界に行ってお金を稼ぎなさい』って言われるんだけど、彼は『自分の人生は何か』とか『神とは何か』とかそういったことを考えてドロップアウトしちゃうんです。僕の中の1960年代のドロップアウトっていうとヒッピーとかいましたけど、これは第一次大戦の後にドロップアウトした青年の話で、それが面白いなと思って。時代が違っても大体やることは同じなんですね」


------なるほど。大戦後のアメリカにもヒッピーのような考え方はあったんですね。

「ええ。主人公はパリに行って、まずはボヘミアンなサークルの中で皆と友達になって、いろんな本を読んで自分探しを始める。今度はもっと肉体労働をした方がいいんじゃないかって思うようになって炭鉱で働いたり、農場で働いたりする訳です。そして最終的にはインドのグルに師事しに行くんですよ。まさに僕たちの時代にヒッピーがやってたことそのものをこの青年は1920年代にやるわけです。舞台もヨーロッパのハイソサイエティからカフェソサイエティからボヘミアンから、いろいろな社会の中を行ったり来たりするような話で。だからね、当時僕たちがやっていたような自分探しを昔もうしてたんだなっていう新鮮さがあって。僕は3回くらい読んだんですけど、大好きな小説ですね」


------古典がお好きなんですね。

「古典っていうと入りにくいじゃないですか。でもこれはすごくうまくエンターテインメントに書かれていて、意外と読みやすいんですよ。僕は英語の原文で読んだんですけど、日本語の訳もすごくいいので、ぜひこれから自分探しをする人にも読んでほしいし、真っ只中の人にも読んでほしいし、僕みたいに一度やったけど読んでみると懐かしいなと思う人にも読んでほしいですね」

------ハリスさん、ありがとうございました!

<プロフィール>

ロバート・ハリス/1948年、横浜生まれ。高校時代から国内、海外をヒッチハイクで旅する。大学卒業後、東南アジア放浪を経てオーストラリアに渡り、16年滞在。シドニーでは書店兼画廊「エグザイルス」を経営する。また、テレビや映画などの製作スタッフも担当。帰国後、92年よりJ-WAVEのナビゲーターに。現在は作家としても活躍している。著書には『エグザイルス』『ワイルドサイドを歩け』『人生100のリスト』『英語なんて これだけ聴けて これだけ言えたら 世界はどこでも旅できる』などがあり、2018年9月には初の長編小説『JJ 横浜ダイアリーズ』を発刊した。


(記事提供:BOOK STAND)

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