自分で好きな本を選ぶのも楽しいけれど、人から薦められて良書に出会えたときの感動も格別なもの。まったく知らなかった本を知ることができたり、これまで避けてきたような一冊が案外自分好みだったりと、そこには新たな発見や驚きがありますよね。
そうした気分を味わえるのが『BOOK BAR: お好みの本、あります。』。本を紹介するJ-WAVEのラジオ番組「BOOK BAR」の10年間の放送から、ナビゲーターである女優の杏さんとクリエイティブディレクターの大倉眞一郎さんが取り上げてきた本50冊分についてが書き起こされています。
1000冊をゆうに超える中から選び抜かれたというだけあって、このチョイスがとにかく魅力的。いくつか挙げてみると、『幕末新選組』(池波正太郎)、『ある明治女性の世界一周日記 日本初の海外団体旅行』(野村みち)、『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ)、『葉隠入門』(三島由紀夫)、『伊達政宗の手紙』(佐藤憲一) ......。小説、ノンフィクション、絵本、マンガなどベストセラーにこだわることなく、ふたりが興味を持った本の数々がバラエティ豊かに並んでいます。
紹介のしかたも「教えてあげる」といった偉そうなそぶりはなく、杏さんと大倉さんのやりとりが毎回楽しげでフラットなのが素敵です。本好きな友人たちが話し込んでいるのを隣で聞いているような感じで、「あ、この本、私も好きそう」「この本はそんな読み方もできるんだ」と自然と興味をかき立てられるはず。
たとえば山本周五郎の短編集『おさん』について紹介した回。山本周五郎は文学史にも登場する有名な時代小説作家ではありますが、今の若い世代はなかなか手にとることがないかもしれません。けれど、杏さんに「昭和17年から37年までに書かれた小説なので、昔の小説なのですが、それでも読みづらさをまったく感じなかった」「これはかなりキュンの路線です。『はぁ~』っていう」「よく女性の方に『何かおすすめの時代小説はありますか?』と聞かれるんですが、『おさん』はぜひ女性に読んでもらいたいですね」と言われるとどうでしょう。若い女性が読んでもとっつきやすく、胸がキュンキュンするラブストーリーが詰まっている......そう聞くと、がぜん読みたくなってくるのではないでしょうか?
番組のリスナーや本書の読者も同じような気持ちを抱くよう。本書の帯には
「このような本を待っていました! 素敵な本とのの出会いを楽しみにしています」
「自分だけじゃ絶対見つけられない掘り出し本が見つかる」
「毎回のプレゼンで読みたい本が増えていくばかり......」
「BOOK BARは、私の読書人生の欠かせないパートナーです」
といった声が寄せられています。書評というスタンスではなく、あくまでも本好きなふたりが語り合う四方山話。その敷居の低さが心地よく、50冊の紹介もまったく飽きることがありません。ぜひ皆さんも本書で一冊......と言わず、何冊もお好みの本を見つけてみてください。