忘年会シーズンもいよいよ終盤戦。連日連夜、「ウ●ンの力」や「へ●リーゼ」を片手に、酒の席を楽しんでいる人も多いでしょう。しかし、本物の酒好きとなれば、忘年会だけでなく、この忙しない時期でもひとり飲みを欠かさないのではないでしょうか。たとえ2次会、3次会の後でもひとり、赤提灯のお店を訪れ、カウンターに腰をおろし、"孤独"を楽しむ。もしくは、落ち着いた大人のバーで仕事や家庭の疲れをリセットする人もいるでしょう。



 一方、ひとり飲みをしたことのない方も少なくないと思います。ひとりで酒を飲んで、なにをすればいいのかわからない、なにが悲しくてひとりさみしく酒を飲まないといけないんだ、などと思っている方もいるかもしれません。



 しかし、ひとり飲みは楽しいものなのです。



 居酒屋評論家でもあるグラフィックデザイナーの太田和彦さんは自著『居酒屋を極める』の中で、ひとり酒の時の「楽しい過ごし方」について綴っています。



 たとえば「注ぐ」という行為。典型的な例として、燗酒を飲む際、徳利から盃に注ぎ、その手を盃に持ちかえて一口。そして、肴に箸を伸ばしては、また徳利へ。この一定のリズムがひとり飲みを楽しくしてくれます。



 また、ひとり飲みは、自分との対話の時間ともなります。もし、友人や恋人と居酒屋に行った場合は、その人と話さないわけにはいきませんし、家で黙り込んで酒を飲んでいると家人に不安を与えてしまいます。酒の場で、自分との対話が許されるのは、ひとり飲みの時だけなのです。



 とはいえ、ひとり飲みの時、なにを考えるのが「正解」なのでしょうか? 太田さんは、ひとり飲み時の、自身の頭の中をこう解説します。



「たいていはまず仕事のことを考える。今日の会議でオレは発言すべきじゃなかったか。上司が言っていることは本音だろうか。オレもいい歳になったが、今の状態を続けていいのか。こうなりたいと思っていた人生を歩んでいるだろうか......。いずれ両親の、いやカミさんの両親もいるから四人の親の面倒をみなくてはならない。介護はたいへんだ。まずはカネだな。まあ、先悩みしてもはじまらないか......。このところ忙しさにかまけて夫婦の会話も足りないな。他愛ない世間話でいいんだ。しゃべることが大事だ......」(同書より)



 このように太田さんはひとりグラス(杯)を傾けつつ、頭の中はあっちに行ったり、こっちに行ったりしながら、ゆっくりと「整理」しているのだとか。多方面で責任を背負うことの多くなった大人は、こういったひとり酒の時間で頭と心を整え、明日からの毎日に備える必要があるのかもしれません。