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なぜ日本のマンガはすごいのか?

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『竹と樹のマンガ文化論 (小学館新書 222)』内田 樹,竹宮 惠子 小学館

『竹と樹のマンガ文化論 (小学館新書 222)』内田 樹,竹宮 惠子 小学館

 いまや海外にもファンの多いジャパニーズポップカルチャー。その中核をなすのがマンガ。京都精華大学に設けられたマンガ学部では、国内のみならず、数多くの留学生も学ぶなど、マンガの国際的な注目は以前にも増して高まっていると言えます。



 書籍『竹と樹のマンガ文化論』は、マンガ家であり現在京都精華大学の学長でもある竹宮惠子さんと、思想家・内田樹さんによるマンガを巡る対談を収めた一冊。同書では、具体的な描写方法にまで踏み込んだ技術的な話から、プロとして活躍するために必要なこと、また竹宮さん自身も指導しているマンガ学部では、どのような授業がなされているのかといった教育論に至るまで、鋭い分析が行われていきます。



 例えば、海外と日本との環境面での違い。アメリカの「アメコミ」やフランスの「バンド・デシネ」といった海外のコミックと、日本のマンガとでは、内容の違いを語る以前に、そもそも印刷や流通・販売のシステム等に違いがあるのだとか。州ごとに流通が分断されたアメリカに対し、物流網が整備され、時間に遅れることもないという日本の環境が、マンガにとって大きな役割を果たしてきたのだというのです。



「日本のすごさは、鉄道などの物流網が発達していることです。日本全国、ほぼ同じ日に同じ値段の本がちゃんと届く。日本の隅々にまで一斉に届きます。(中略)物流が保証されるからこそ、日本全国津々浦々まで、マンガ雑誌の発売日が設定できるのです」(竹宮さん)



 さらにアメリカでは出版社と出版契約を結んでから仕事を始めるのに対し、日本のマンガ界には契約書がないため、締め切りに間に合わず原稿を落としても罰せられることはないのだそうです。しかし、締め切りを破ってしまうと次は使われないため、作家たちは怖くて締め切りを守らざるを得ない。そしてその締め切りは、流通網の整備によって保証された、遅れることの許されない確実な締め切りであるという緊迫した状況が、作家たちを鼓舞し、結果的に戦後日本マンガの作品クオリティを高めたのだといいます。



 マンガの歩んできた歴史、その歴史上で近年マンガが直面している、電子書籍として出版されることによって生じている問題や、世界共通のものとするための課題といった様々な角度からなされる対談からは、マンガの持つ奥深さや可能性を感じ取ることができます。同時に、そこで考えられている問題は、他の芸術分野においてもまた当てはまる部分が多いのではないでしょうか。


(記事提供:BOOK STAND)

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