海外旅行をしていると、サービス名や商品名が、ご丁寧にも日本語で表記されていることがあります。しかし、「?」と思うような不思議な日本語が多いことも事実です。



 特に、料理のメニューの場合では「炭素はたばこの肉を燃やして巻く」「手はナスを引き裂く」「チキンかりあげ」などと奇妙な日本語が表記されていることも。旅先で見かけた不思議な日本語を、土産話にする人も多いでしょう。



 街角で見かける奇妙な日本語表記。国内でも気になるものがあると指摘するのは、ノンフィクション作家・エッセイストの山口文憲氏です。書籍『若干ちょっと、気になるニホン語』では、そのような気になる日本語をピックアップしています。



 そのなかの一つが、電車のなかで見かけることの多い、携帯電話の使用に関する注意書き「マナーモードに設定の上、通話はご遠慮ください」。



 「この表記の意味はわかるし、読みとばそうとすれば読みとばせるが、以前からひっかかる文章だな」と思っていた山口氏は、違和感を感じる理由は「"設定の上"の"上"の使い方」にあると気づいたそうです。



 「こういう場合の"上"には行為の前後関係を指示する働きがある。つまり、Bのことをする前にAのことをせよ、というのがその機能で、"返信用切手を同封の上、下記の住所へお送りください"がその典型だろう」(山口氏)



 「マナーモードに設定の上、通話はご遠慮ください」は、「マナーモードに設定せよ」と「通話を遠慮せよ」の間に前後関係がありません。そのため、そもそも「上」を使うことができないのです。



 普段何気なく目にしている日本語には、お客に対する"丁寧すぎる"丁寧語、上司に気を使いすぎるがあまり使ってしまう過度な尊敬語など、不自然なものがあります。その日本語のどこがおかしいのか、どうしてそうなったのかを教えてくれる一冊です。