近年、「マタハラ」という言葉を見聞きすることが増えました。正しくは、マタニティ・ハラスメント。つまり、職場で行われる、妊娠、出産をした女性たちに対するハラスメントのことです。



 日本労働組合総連合会の調査では、マタハラ被害を受けたのは、実に4人に1人の25.6%に。実際に受けたり、周囲であったりしたマタハラ被害は「妊娠中や産休明けなどに心ない言葉を言われた」「妊娠・出産がきっかけで、解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導などをされた」など、信じがたいものばかり。こういったことが横行すると、妊娠・出産に対して遠慮がちになってしまうのも仕方ありません。男性もまた、自らの仕事のことで精一杯。妊娠・出産するパートナーに対して、十分なフォローができない状態になっています。



「子どもは、周囲から"おめでとう"と言ってもらって産まれてくる存在ではなかったか。今、そのムードは失われつつある」



 警鐘を鳴らすのは、書籍『ルポ産ませない社会』の著者・小林美希さん。妊娠解雇や職場流産が珍しいものではなくなった現在、妊産婦は職場でも社会でも孤立しているといいます。書籍のタイトルのように、子どもが欲しいと思っても産めないのではなく、社会が「産ませない」と言わなければいけない状態にあるのです。



「国は子育てに関する財政出動を嫌う。保育所の増設は費用が嵩むため、育児休業の拡充に逃げる。保育所を増設しても、規制緩和といって市場開放する。民間企業は、利益を出すために人件費の高いベテランを雇わず、低賃金の若手を数年で回転させ、保育の質の劣化を招いているケースが目立つ。それでは、孤育てする親が保育のプロである保育士に育児相談もできない。良い保育が消失されつつあり、まるで、『子どもが心配なら家で(母親が)みろ』と言わんばかりの環境が整ってはいないか」



 小林さんは、そう問題定義します。同書は、子育てを未だに「女性」だけに押し続ける現実を問う、痛切なルポ。この問題で次の世代を苦しめないためにも、まずは本著を読んで、現状を知ってみるのはいかがでしょうか。