●アルコール依存、摂食障害……「命の恩人はストリップ」 葵マコさん

 関西の芸術系大学を卒業した。舞台芸術を専攻し、仲間と結成したパフォーマンスグループの公演は、卒業制作作品学長賞を受賞するほど高く評価された。

 そんな葵マコさんをストリップの世界へ誘ったのは、たまたま見たクラブイベントに出演していた踊り子さんだった。

「身体の見せ方やポーズの美しさに魅了されました」

 そしてストリップ劇場へ。

「目の前で服を脱いでいってあらわになっていくその身体や表情をみながら、『私にとっても大事なところをさらけ出してくれてるんじゃないか』って思いました」

 すでに家庭問題や摂食障害で精神的に追い詰められ、酒に依存していた。それを乗り越える術をストリップに託し、08年7月にDX東寺(京都)でデビュー。夢にまで見たストリッパーとしての第一歩を踏み出した。

 しかし、理想と現実の乖離(かいり)に悩み、一人になると孤独感にさいなまれ、ますます酒に溺れた。過食・嘔吐(おうと)も一段とひどくなった。

「朝起きられず、出番ギリギリでステージに出たり、忘れ物も増えたり。依存症によるミスを隠すことに追われて精神的にもいっぱいいっぱい。やむなく休業することにしたんです」

 リラクゼーションサロンやパン屋で計1年9カ月働いた。

「両方とも一生懸命だったのですが、『ここじゃない。ずっといるのは違うな』と。それで復帰したんです」

 だが、酒はなかなか止められない。

「缶チューハイの空き缶の山のなかで寝たこともありました」

 何かと理由をつけて酒に逃避する自分に嫌気がさした。「このままでは本当にダメになる」と一念発起。15年4月、酒を断った。

「自分を冷静に見つめるにはストリップに打ち込むしかない。ちゃんと踊れるようになろう」

葵マコさん/大和ミュージック劇場(神奈川)
葵マコさん/大和ミュージック劇場(神奈川)

 以来、これまで一滴も口にしていない。最近はたびたび、「実はぼくもお酒やめてます」と声をかけられることが増えた。

「断酒の輪が広がってきているのはとてもうれしいです。楽しく飲めればいいですけど、コントロールできなくなった時の孤独が一番危ない。1人じゃできないことも皆でだったら乗り越えられる。そんなことを教えてくれたのもストリップでした」

 ストリップに命を救われたと思っている。

(取材・撮影/高鍬真之)

※週刊朝日オンライン限定記事