デモ隊の最前線(現地記者提供)
デモ隊の最前線(現地記者提供)

 ミャンマーでも若者達がデモは引っ張っている。アピールの手法も様々で、「私の元彼はひどいけど、ミャンマー国軍はもっとひどい」「軍事クーデター時代<片想い相手からの返事」といったいたずら心あふれるプラカードを掲げてデモ行進をしている。

「最初は大人達が『危険だからデモには参加するな』と言っていたのが、若い人がどんどん集まるので、大人達も後に続くようになった。もちろん暴力を恐れている人もいます。ですが、銃を恐れて沈黙したら、民主主義を未来につなげない。暴力に負けず抗議を続けるよう全世代に訴えています」(前出の女性記者)

 ただ、デモが大きくなるにつれて若者の犠牲者も出ている。3日には、「エンジェル」のニックネームで知られていたチェーズィンさん(19歳)が治安当局に頭を撃たれて亡くなり、世界中から追悼の言葉が寄せられた。

催涙弾を浴びて逃げる人たち(現地記者提供)
催涙弾を浴びて逃げる人たち(現地記者提供)

 国連児童基金(ユニセフ)によると、クーデターが起きてからすでに500人以上の子供が拘束されているという。最近では、デモに参加するにはヘルメットなどの防具が必要になり、平和的な抗議集会の開催は難しくなっている。

 それでも、ミャンマーの人たちは軍事政権に屈していない。デモ隊を組織する女性活動家は言う。

「先日、複数の活動団体と協力して、戦略的に抗議活動を続けることで合意しました。軍事政権に、私たちの国を支配させません。最後まで戦い抜きます」

 ある男性記者は、取材を続けながらも、夜には地域の人を当局から守る自警団の当番もして睡眠不足の日々が続いていると話す。取材中にゴム弾が背中に直撃したこともあるが、それでも「取材はやめない」と話す。今、日本人に伝えたいことは何か。

「世界中の人たちがミャンマー市民に共感してくれていることに感謝しています。武力で国民を虐げている軍事クーデターを認めず、非難し続けてください」

(フリーランス記者・鈴木貫太郎/本誌・西岡千史)

※週刊朝日2021年3月26日増大号掲載記事に加筆