奈良県知事選の勝利に喜ぶ維新公認の山下真氏

 脅威はすでに現実のものとなっている。顕著なのは、維新が圧勝した大阪・兵庫だ。

 維新はこれまで大阪市議会で過半数を割っていたため、市政運営で公明の協力を受けてきた。「大阪都構想」でも公明は賛成に回り、維新は見返りに、公明が候補者を立てる衆院小選挙区(大阪4、兵庫2)で候補者擁立を見送ってきた経緯がある。

 しかし、維新の馬場伸幸代表は統一地方選の結果を受けた9日、この関係を「一度リセットする」と言明。次期衆院選で全小選挙区に候補者を擁立する方針を示した。公明にとっては、小選挙区で維新候補に敗れる可能性が出てきたのだ。

 公明は、衆院選挙区の「10増10減」をめぐる自民との調整も泥沼化しており、頭が痛い展開だ。自民党関係者はこう指摘する。

「“常勝関西”を標榜する公明が仮に大阪・兵庫の小選挙区で全敗するようなことになれば、計り知れないダメージになる。公明の崩壊はすなわち、自公連立政権の崩壊を意味しますから、ある意味では維新が国政のキャスティングボートを握りつつあることになるわけです」

 では、維新が国政の主役に躍り出る日が近いのかというと、そこには懐疑論もある。政治ジャーナリストの野上忠興氏はこう指摘する。

「維新は今スポットライトを浴びていますが、今回の統一地方選の結果は、『大阪維新の会』がちょっと広がって『近畿維新の会』になっただけとも言える。三重、鳥取など隣接県では議席がとれていないし、愛知でもダメ。全国規模で広がったわけではありません。かつて小池百合子氏が希望の党を立ち上げて結果的に有権者を失望させたように、新興政党の躍進が短期で失敗する例は数多い。一時的に自民から票が逃げているだけという感じもします」

 たしかに、今回の結果を受けても維新が議席を持つ都道府県議会は20にとどまる。野上氏は「面としては広がったかもしれないが、自民党のような県連組織がないわけだから。足腰が弱い」と指摘しつつ、こう語る。

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