世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題を受け、今国会中に被害者救済の新法を成立させようと息巻く岸田政権。だが、検討案には実効性の面で批判も。消費者庁の検討会で委員を務めた菅野志桜里元衆議院議員が緊急寄稿した。
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高額献金とともに人生の選択肢を奪っていく旧統一教会問題。対策として政府が提案した献金規制法案に対し「実態がわかっていない」「救済範囲が狭すぎる」などと問題指摘が相次いでいます。
なぜ、実態把握が不十分なまま、救済が限定的な提案になってしまうのか。その原因を一言でいえば、政治的思惑。「今国会で仕上げたい」という政治的思惑が拙速な議論を生み、「他の宗教法人の機嫌を損ねたくない」という政治的思惑が大雑把な寄付一律規制へとつながっています。そもそも、私が消費者庁の霊感商法対策検討会に入って報告書をまとめたときのイメージでは、来年の通常国会で消費者契約法と宗教法人法の改正を両輪で仕上げ、より広いカルト規制新法については別に検討会を立ち上げて数年単位で検討していただきたいと考えていました。それだけ重たいテーマだと今も思っています。
しかし、現在与野党ともに「今国会成立」と功を焦りすぎて、きちんとした実態把握の時間が取れていません。「今国会で終わらせたい」という与党の思惑と、「今国会で実績をあげたい」という野党の思惑が奇妙に合致し、あたかも12月の国会閉会が締め切りとなっていることに大きな違和感を覚えます。被害者や弁護団から丁寧に実情を聞く手間を省くから、現実には使いにくい法案になっているのです。また、例えば家族の救済について、自分の財産の使い道は自分で決めるという基本的な財産権との衝突をどう調整すれば違憲とならないか、複数の憲法学者や民法学者からの意見聴取も不可欠です。今国会で必要なヒアリングなど作業を重ね、それでも国会審議に間に合わなければ、来年の通常国会の最優先事項として法案成立を約束する。この道筋を考えてもいいのではないでしょうか。それでもなお、迅速な救済のために今国会成立を目指すなら、せめて規制の対象を今問題となっている宗教法人の献金にまずは限定して法案をつくるべきです。