東尾修
東尾修

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、巨人が獲得した松田宣浩選手と長野久義選手の役割、亡くなった村田兆治さんについて語る。

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 巨人がソフトバンクを退団した松田宣浩内野手を獲得して、広島からは無償トレードで長野久義外野手を復帰させた。松田が39歳で、長野は37歳。ファンの方にはワクワクする部分と、逆に戦力になるのかというシビアな見方があると思う。

 以前の当欄でも書いたが、野球界全体がパワーアップしていく中、ベテラン選手にはつらい状況が訪れていると指摘した。その考えがある一方で、だからこそ、壁を打ち破ってくれる選手が出てほしいという思いもある。

 例えばサッカーの三浦知良選手が55歳で今なお現役で続けている姿はどう見えるだろうか。どこかに「年齢の壁」というものがつくられ、その中にいる者は視界が狭くなる。ただその中で、その「壁」を突き破った選手がいるなら、その先の景色がみんなの目の前に広がる。選手ごとにいろいろな美学があっていい。ただ「もうキツイ」と思った時点で終わってしまう。

 三浦知良選手には衰えぬ向上心がある。松田、そして長野には、ぜひ、レギュラー奪取に挑んでもらいたい。ベンチで盛り上げることは若手だってできるし、経験を伝えることはコーチだってできる。選手である以上、まだまだ試合の中でチームを助ける存在であってほしい。

 巨人は今年、リーグ4位に終わった。若手を我慢して使った成果を、来季へつなげなければいけない年である。

 だが、1年間使い続け、来年も上がり目を見せられない選手は、厳しい言い方になるが、ある程度の見切りをつけなければならない。

 そういった時に必ずベテランの力は必要になる。原辰徳監督が経験豊富な2人をどう使っていくのかにも注目したい。

 先日、野球界にとって悲しいニュースもあった。「マサカリ投法」で人気を集めた元ロッテ投手の村田兆治さんが11月11日、東京都世田谷区成城の自宅で発生した火事で死亡した。この知らせを受けた時には驚いた。兆治さんのような「頑固なエース」は今の時代にはもういない。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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