東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、日々成長するロッテの佐々木朗希に期待を寄せる。

【写真】「進化」を続けるロッテ・佐々木朗希

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 ロッテの佐々木朗希が6月22日の西武戦に中10日の間隔を空けて先発登板した。結果は7回3安打無失点、9奪三振で5月20日以来、約1カ月ぶりの6勝目を手にした。

 佐々木は確実に磨きがかかっている。西武の辻監督も「進化している」と試合後に話していたが、具体的には打者の状態、反応を見ながら、自分の球の出力を変えられるようになってきている。練習時からしっかりと意識しているのだろう。

 直球の球速帯ひとつとっても、それがわかる。5勝目を挙げた5月20日の直球の平均球速は今季最も速い161.1キロだったが、6勝目を挙げた西武戦では、最速こそ163キロを記録したが、平均は158.7キロ。154キロという直球もあった。100球前後という球数の中でいかに無駄な力を省いて、打者の力量、出方に合わせて出力を変えられるか。それを実践できる状態になってきているということだ。

 これまでは自分のいい球を100球目までしっかりと投げるということに重きを置いてきた部分があると思うが、そこに自分のその日の状態と相手との比較という要素が入ってきた。1段階上がったね。

 かつてはよく「手抜き」と表現されたが、今は「ギアチェンジ」といったところか。出力を変えるというのは、小手先で力加減を調節するだけではない。例えば154キロでも、しっかりとしたバランスで投げれば、力を込めなくても、キレのある球は行く。

 さらに、力を入れたときには、力みに変わらないようにすること。佐々木の場合は、よくシュート回転した球が行くが、そういった確率もフォーム分析、本人の感覚の中で修正する術を覚えていくことだ。

 今は佐々木の疲労度をしっかりと球団、首脳陣が管理し、時に出場選手登録を抹消し、休息を与えながら使ってくれている。しかし、これから夏場、そして優勝争いに加わってくるときには、中6日で回っていくことが必要になる。同じ100球でも、どれだけ疲れを残さない100球で長い回を投げていけるか。打者の洞察力や試合展開を読む力といった本人の成長も必要だし、登板間隔や球数だけでなく、試合の中でどれだけエネルギーを使う場面があったかを見ての交代判断、さらに大差がついた試合での交代など、首脳陣も臨機応変に対応して、秋に力を最大限出せる状況をつくることだ。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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