値上がりの勢いが止まらないガソリン価格と原油価格
値上がりの勢いが止まらないガソリン価格と原油価格

 ロシア軍のウクライナ侵攻が世界経済に打撃を与えている。原油をはじめ、金属や資源などの価格が上がっている。危機が長引けば、ひどいインフレやモノ不足に悩まされる“オイルショック”の再来を心配する声もある。

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「今年は過去最悪になるんじゃないかな」

 釣り船の運営やシラス漁を手がける鹿島灘漁業協同組合(茨城県鹿嶋市)の長岡浩二・組合長はこうため息をつく。

「うちは2~3人乗りの小さな釣り船だけど、10人乗せないと赤字を抜け出せないよ。ただコロナの影響も受けているから客も少ない。漁師だから休んでもいられないし、どうしようもない感じだよね」

 コロナ禍で客足が減ったところへ、燃料代の値上がりが追い打ちをかける。北海道漁業協同組合連合会(札幌市)によると、船を出さない人もいるという。

「値上がりが続けばカレイ類など、北海道で年中取れる魚が市場に出回る量は当然、少なくなります」(担当者)

 ロシア軍のウクライナ侵攻後、原油価格は上がっている。ニューヨーク原油市場は3月3日、国際的な指標となるWTIの先物価格が1バレル=116ドル台まで上がり、リーマン・ショックが起きた2008年9月以来、13年半ぶりの高値をつけた。

 エネルギー事情に詳しい和光大学の岩間剛一教授は「史上最高値である1バレル=147ドル超えも視野に入ってきた」と言う。

「ロシアの原油生産量は米国、サウジに次ぎ世界3位。一方で、国内での消費量は比較的少ない。今までの供給量が突然なくなることは考えられませんが、ロシアの1日あたり輸出量約800万バレルのうち、例えば100万~200万バレル減るだけでも影響は大きい」

 原油価格の上昇は、いろいろな商品やサービスの値上がりにつながる。真っ先に影響が表れるのが、ガソリンや灯油、重油など車や暖房に使う燃料費だ。冒頭に紹介した漁業など燃料が必要不可欠な業界には重しだ。

 資源エネルギー庁によると、レギュラーガソリンの店頭価格は2月28日時点で1リットルあたり172.8円と8週連続で値上がりした。軽油や灯油の値上がりも8週連続だ。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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