この局面での病名公表は言論に対する圧力だという批判を受けることは宮内庁も分かっているはずだ。しかし、ここまで言わざるを得ないところに追い詰められていたと私は見る。

 この問題に関する言論を歪ませた責任は、週刊誌にもあると私は考えている。とくに女性週刊誌の作りはひどい。推測を事実と混同する手法や、匿名談話の引用部分をあたかも確定的な事実のように報じ、しばしばメインのタイトルにもってくるやり方は悪質な印象操作と言っていい。

 たとえば、ある女性週刊誌の2021年5月4日号のタイトルは「“小室圭さんと共謀”の代償で眞子さま皇室追放へ」「ついに宮内庁が前代未聞の“内親王外し”に動きだした」であった。4月8日に発表されたいわゆる「小室文書」の対応の背景には眞子さまの意向もあったことを、小室さんとの「共謀」と評価したのである。

 同誌は「宮内庁関係者」の証言として、結婚容認と引き換えに眞子さまは結婚前の皇籍離脱という条件を受け入れたと紹介。さらに、この「宮内庁関係者」に、「眞子さまがまず(結婚前に)“一般人”になるしかない」「皇籍離脱は実質的な“皇室追放”」と語らせた。重大なニュースの情報源は匿名の「宮内庁関係者」である。

 断言するが、宮内庁が結婚前の皇籍離脱を検討したことは全くない。

 結果を見ればこの記事はフェイクニュースと断言できる。しかし、これを読んだ読者は、<眞子さまが皇室から追放される>ことが本当だと受け取ってしまう。そして、眞子さまの「わがままさ」への中傷も広がるのである。

 もうひとつ、別の週刊誌(2021年1月1日号)の例を挙げる。

 記事は「宮内庁関係者」が、結婚後の眞子さまと小室さんに秋篠宮家からの援助の可能性があり、「それを把握する術は国民には一切ありません」。さらに、次に「皇室関係者」なる人物を出し、「表面上は、“駆け落ち婚”に見えても、半永久的に皇室のお金が流入するのでは」と語らせている。タイトルのひとつは「これから始まる濡れ手で粟の『皇室マネー生活』」である。

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