花を育てるのが大好き。花壇作りは苦ではない。一緒に手入れをするメンバーは、区の掲示板に掲載して募った。

 遠出がしにくいコロナ禍の今、自分が暮らす街にこうした「行き場」があってよかったと、中島さんはつくづく思う。実際、保育園の散歩道にもなっているこのガーデンが今、大活躍している。

 サラリーマン風の男性がベンチに腰掛けて弁当を食べていたり、パソコン作業をしていたり、学生風の人が絵を描いたり、写真を撮ったり……。

「昨年、最初の緊急事態宣言が出されたとき、皆さん近所しか行くところがなくて。近所を散歩していてガーデンを知ったという人が意外と多いんです。植物の手入れをしているといろいろな人から『こんなところに、こんな場所があったんですね』『家と駅との往復ばっかりだったので、気付かなかった』って声をかけられました」(同)

 ラジオ体操は2度目の緊急事態宣言が出た今年1月から開催している。きっかけは、区のボランティア活動を機に知り合いになった独り暮らしの80代の女性からのSOSだった。

「ずっと家から出なかったら、歩けなくなってしまったの……」

 何とかしてほしい。女性は何度も訴えた。

「それならということで、公園でラジオ体操を始めることにしたんです。家から出るきっかけもできるし、体操はできなくても公園でおしゃべりするだけでいい。ただ、(ラジオ体操の放送時間の)6時半にみんなが集まるのは難しい。そこでCDを買って、午前10時に流すことにしました」(同)

 気がつくと知り合いが友人を誘って……というふうに、輪が広がった。参加者は60~80代で独り暮らしの女性が圧倒的に多いが、週末は若い父親が子どもを連れてきて、一緒に体操をすることも。常連には、101歳のお元気な女性もいる。ラジオ体操やガーデンの散歩を心から楽しみにしているそうだ。

「今日はお見えになっていなかったけれど、杖をつきながら公園に来て、一緒に体操するんです。その後、一緒にガーデンに行ってベンチに座って少し休んでから帰られるのが日課」(同)

 ラジオ体操を終えて、ガーデンの手入れを一緒に行いながら、昔の恋愛映画の話を楽しそうに語っていた80代半ばの女性。独り暮らしで、これまでは友人といろいろと出かけていたが、今は気軽に誘いにくいという。記者に向かってこう話した。「ここに来るのが楽しい。今はね」

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2021年7月30日号より抜粋