東尾修
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ヤンキース戦で28号2ランを放つ大谷翔平 (GettyImages)
ヤンキース戦で28号2ランを放つ大谷翔平 (GettyImages)

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、大谷翔平選手のアッパースイングの秘密について解説する。

【写真】ヤンキース戦で28号2ランを放つ大谷翔平選手

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エンゼルスの大谷翔平が周囲の想像を超える活躍を見せている。だが、その想像も周囲が勝手に枠を決めたものであって、大谷の見えている景色、目標到達地点はもっと違うものなのかもしれない。

 米国時間6月29日(日本時間30日)、大谷は敵地ニューヨークでのヤンキース戦で第2打席に両リーグ単独トップに立つ3試合連続の27号ソロ、さらに続く第3打席でも28号2ランを放ち、本塁打王争いでトップを快走する。この時点で6月の本塁打は13本目で、2007年7月に松井秀喜(ヤンキース)が記録した日本人月間最多記録に並んだ。翌30日(日本時間7月1日)の登板は1回持たずに7失点KOとなったのは残念だったが、こういう苦い経験も大谷ならプラスに変えてくれるのでは、と想像する。

 豪快なスイング、アッパースイングが話題となっている。正直言うと、大谷だからこそできるスイング、と言わざるを得ない。ちょっと踏み込んで話をする。「重力」を考えた場合、バットは上から下に落としていくほうが、重力の力も得られ、スイングスピードがつく。ダウンスイングの中で、バットとボールが当たる間際で水平となり、フォロースルーをとるというのが一般的である。ただ、大谷の場合は落としていったバットがまた下から上へとアッパーになる。これは、相当な下半身の力と腰、背筋の力が必要だ。そして、160キロ近い球に対し、球威に負けない力を加えられる。左手の押し込みが加わってのものだ。

 本来、投手が投げたボールというものは、重力に負け、地面へと落ちる。アッパースイングはボールの軌道に入っていく点では理にかなっている。だが、日本球界では矯正される対象になっていたと思う。それは、そのスイングをできるだけのフィジカルがなかったということ。大谷だって、高校からプロに入って7年、8年かけてこの域に到達した。だから、小中学生の皆さん、すぐにまねできるものではないということだけはわかってほしい。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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