門脇:はい。歌手になる能力はなさそうだし。ただ、舞台はバレエの発表会とかコンクールでなじみがあったので、舞台から攻めて徐々に壁を崩していこうと思って、ボイトレ(ボイストレーニング)もやったり、ミュージカルで使えるようなシアター系のダンスやタップダンスを、高校の3年間は幅広く練習してました。
林:芸能界に入ることを、ご両親は許してくれたんですか。
門脇:ものすごい反対でした。愛情をかけて大切に育ててくれましたけど、わりと厳しい家ではあったので。特に父親は厳しくて、うち、壁にいっぱい穴開いてます。父が怒って開けた穴が(笑)。
林:ひえ~。どうやってご両親を説得したの?
門脇:大学も受験するつもりでいたんですけど、このままズルズルいくと親にも認めてもらえないだろうし、女優さんってみんな10代でデビューしてるじゃないですか。だからやるなら今、踏ん切りをつけないと間に合わないなと思って、「大学は受験しません。塾もやめてきました。反対するんだったら、このままニートになります。だから許してください」と言って。
林:わっ、すごい! でも、逆にご両親は「頼もしい」と思ったんじゃない? そこまで言うなら、手放しても大丈夫だろうって。ちなみに、お勉強はできたんですか。
門脇:勉強はそこそこですね。そんなに好きではなかったです。探求心で勉強するというよりは、効率よくテストの点数を稼いでいこうという勉強スタイルでした。もし興味ごころをくすぐられる科目があったら、大学も受験してた可能性はありますけど、あんまり魅力が感じられなくて、「べつに大学行かなくてもいいかな」と思いました。
(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)
門脇麦(かどわき・むぎ)/1992年、東京都出身。2011年、女優デビュー。13年、大河ドラマ「八重の桜」出演。15年、NHK連続テレビ小説「まれ」出演。同年、「愛の渦」などで第88回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞を受賞。18年、第42回エランドール賞新人賞、19年、第61回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。20年、大河ドラマ「麒麟がくる」で“麒麟”の存在を信じる戦災孤児・駒を演じた。最新主演映画「あのこは貴族」が2月26日、全国映画館で公開。
>>【後編/門脇麦、芝居の話より「魚」が好き さかなクンに「会ってくれないかな」】へ続く
※週刊朝日 2021年3月5日号より抜粋