こうした現状について売人の男は、

「違法薬物を“安心・安全”に運べる状況になっている」

 と話した。売人たちにとっては、皮肉にもコロナ禍での自粛が好都合になっているのだ。

 大手フードデリバリーサービスのロゴの入ったバッグは、元々はデボジット(保証金)を運営者側に払い、借りるバッグであったが、返却されないケースも多く、フリマサイトなどを通じて市中に出回った。それは、購入される金額が、デボジットの額を上回るケースが多いからだ。

 いまでは、これらのバッグは大手通販サイトで購入することができる。ロゴが入っていなければ3千~4千円。大手フードデリバリーサービスのロゴが入っていれば8千円弱で売られている。新品にこだわらなければフリマサイトやオークションサイトで5千円前後だ。

 大麻の売買の現場といえば、クラブや路上、駐車場などが多いが、路上や駐車場は職務質問に合いやすく、防犯カメラにも映りやすいというのが難点だった。

 また、やましいことをしていると、どうしても人の目を避け、逃げるような行動になるといい、駐車場でも奥の方、奥の方へと行きがちになる。繁華街などを抱える警察署は、そうした点を見逃さないのだ。

 売人たちは、大麻を運ぶ際も色々と気をつけなければならなかった。
「以前は車やバイク、電車などで配達をしていました。だけど車やバイクは警察に止められるケースも多く、電車は駅などたくさんの防犯カメラがあって、受け渡しすら監視されています。だから自転車が一番フットワークも軽く、防犯カメラにもあまり引っ掛かりません」(前出の売人)

 前述したように、フードデリバリーサービスの会社名が入ったバックを背負っていれば、どこかの飲食店の料理を運んでいるようにしか見えない。外見だけでは、職務質問に合う心配はほとんどないのだろう。

 利点はそれだけではない。売人の男が語る。

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