古賀茂明氏
古賀茂明氏
後手後手の対応の菅首相(c)朝日新聞社
後手後手の対応の菅首相(c)朝日新聞社

 コロナ感染の拡大が止まらない。現場の様子を伝える報道では、「トリアージ」(命の選別)という言葉も頻繁に聞かれるようになった。

【写真】生ぬるい?菅首相に危機感はあるのか

 だが、政府の対応は後手に回り、かつ生ぬるい。何が問題なのだろうか。

 危機対応の要諦は、最悪の事態を想定し、それに備えることだ。欧米の例を見れば、今の日本程度の感染状況から感染爆発でロックダウン(都市封鎖)に追い込まれるまでさして時間はかからなかった。日本では、時短要請に応じない飲食店などに罰則を科す議論や入院を拒否する患者への刑事罰などの議論をするにとどまっている。そこには、これまでの延長でも危機を切り抜けられるという大甘の前提がある。

 今すぐに、ロックダウンを想定した強制措置について議論を始めないと、事態悪化のスピードに追いつかない可能性が高い。

 しかも、「強制的ロックダウン」を行った場合の経済的ショックは、これまでのナンチャッテ緊急事態宣言の時とは比べ物にならないほど大きい。今回の1日6万円、月180万円の飲食店向け協力金や関連事業者への40万円の補助などでは全く追いつかない。倒産する事業者が続発するはずだ。

 逆に言うと、それを恐れた政府や自治体がロックダウンを躊躇して対応が遅れることにより、感染拡大が制御不能になるかもしれない。つまり、「強制的ロックダウン」の措置とそれを想定した「異次元の救済措置」を今から準備することが必要なのだ。

 では、「異次元の救済措置」とはどんなものか。

 これについては、実は、昨年本コラムで提言したものがそのまま使える(5月1日号)。キーワードは、ハイブリッド、ワンストップ、ノンリミットの三つだ。これまでの事業者向け支援措置には、昨年の持続化給付金、家賃補助、雇用調整助成金、今回も含めた自治体から支給される協力金、さらには政府系機関による融資・保証など多くの助成措置がある。しかし、事業者から見ると、いずれも時間と手間がかかり、しかもそれぞれが中途半端で不十分というケースが多い。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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