当時、私は結婚していたのですが、志村さんは家族みたいな感覚で、パジャマで出入りしていました。普段は割ともの静かで、あんまりしゃべらない。をなでてあげたり、毛づくろいをしてあげたり、猫とまったりと遊んでくれていたのが印象的です。

 お酒もゆっくり飲んでグデグデしているのが好きで、ワーッとはしゃぐタイプではなかったですね。志村さんとともに猫たちと過ごした静かな時間は、今でも忘れられない思い出です。

 そういえば、麻布十番で食事をしている時に志村さんを見かけると、よく、若い女の子を連れていましたね(笑)。私が「今度の彼女、かわいいね」とメールすると、「彼女じゃないよ」みたいなことはよくありました。

 志村さんが新型コロナに感染し、亡くなったのは3月。乗り切って欲しい、笑い話になって欲しいと、回復を祈っておりましたので未だに受け入れることが難しいです。蘇る様々な場面を思い出しています。ゆっくり休んで、体のことを心配せずに好きなお酒を楽しんで欲しいです。

 志村さんが亡くなったときにはまだ、コロナウィルスの感染拡大が始まった頃で、感染するということに実感がありませんでしたが、11月には私も感染してしまいました。38度くらいの熱が出て、10日間、ホテルの施設で隔離生活を送りました。今はすぐそばまで、コロナウイルスが来ているという実感があります。嗅覚異常が続いていたのですが、その後遺症も治り、もう大丈夫です。

 家に帰って、猫との日常が戻ってきて、ほっとしています。私にとって猫は生活の一部なので、冬になれば一緒に布団で寝ています。猫の方も、人の首が温かいことを知っていて、私の首とかに乗っかって寝ていますよ。「あ、苦しい」と目が覚めることもあります。

 人生には2通りあって、猫のいない人生と猫のいる人生がある。私は後者を選びました。やっぱり猫がそばにいるというのは、幸せですよ。

(本誌・上田耕司)

週刊朝日  12月18日号より、一部加筆

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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