私はJKA(旧・日本自転車振興会)の会長だった際、何度か直接会うことがあった。
私が会長に就任した時は自転車(公営競技の競輪)だけだったのが、同じ経産省の管轄であったオートレースも途中からJKAの担当になったからである。年末のレースに出席し表彰式に出るという仕事もあった。
そこで出会った森くんに、私が持っていた週刊誌のコラムに登場してもらおうとインタビューを申し込んだ。ところが即断られたのである。理由は、目立ちたくないということだった。スマップだった頃の事務所からも圧力があったかもしれない。気の毒だった。
それが先日、日本選手権で初優勝し、かつてのスマップのメンバーたちがお祝いのコメントを発表しているのを見て、やっと彼にも明るい時代が来たことを心から喜びたくなった。
※週刊朝日 2020年12月11日号
■下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『年齢は捨てなさい』ほか多数