
新型コロナウイルスに感染して亡くなった志村けんさんの遺志を引き継ぎ、映画「キネマの神様」の主演代役を引き受けた“ジュリー”こと沢田研二。その男気にファンや関係者の間では称賛の声が上がったが、ここへきて「本業」である歌手活動の先行きを心配する声も出始めた。
ジュリーはコロナ禍の影響に配慮し、今年5月から予定されていたライブツアーを中止。そこまでは一般的な対応だが、7月頃からは「先の見えない現状を鑑み」と、ファンクラブや公式サイトの運営までも休止してしまったのだ。
近年、メディア対応をほとんどおこなわず、ライブのMC以外では意見を発信しないジュリー。極度の情報不足に陥ったファンの間では「これからどうしていくの?」「このままフェードアウトしないよね?」などと、いても立ってもいられない状況が続く。
長年のファンで、『沢田研二大研究』(青弓社)の著書もある國府田公子(こおだきみこ)さんは次のように語る。
「石橋をたたいても渡らない性格の人だと思うので、新型コロナの影響を深刻にとらえているのではないでしょうか。ご自身もファンの大半も、高齢ですからね。また、事務所の体制も岸部一徳さん(ジュリーとはザ・タイガース以来の盟友)が新社長となるなど多少の変化があったようです。このまま終わるつもりはないからこその新体制でしょうから、そろそろ来年以降のスケジュールについて発表してくれてもいいと思うんですが……」
当面は、12月にNHKから発売されるDVDボックスと来年公開予定の「キネマの神様」を楽しみにして過ごすという。
2018年にイベント会社の集客不足を理由にさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)でのライブを“ドタキャン”したことからもわかるように、もともとジュリーは、音楽活動のあり方に対して自身の考えを貫こうとする強いこだわりがある。このため他の歌手たちのように配信ライブでファンに呼びかけたり、客席を減らしてでもライブを決行したりするようなことは期待できそうにない。もう少しサービス精神や商業的な色気を出してもいいんじゃないかと思わなくもないが……。
しかし、ここまできたらそんな不器用なダンディズムすらも「沢田研二」という魅力だろうか。みんなが空気を読みながら小器用に立ち回ろうとする現代にあって、何者にもおもねらないジュリーの生き様には何とも言えないカッコよさが漂うことは確かだ。(中将タカノリ)
※週刊朝日 2020年12月4日号
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