介護保険制度は、40歳以上の人の保険料と国民の税金、利用者の自己負担金で賄われるが、20年前の開始時には3・6兆円だった総費用は、19年度で11・7兆円と約3倍に膨らんだ。

 厚生労働省によると、制度が始まった00年度の国民1人当たりの月額介護保険料の全国平均は2911円だったが、18年度には5869円に。25年度には7200円になる見込みだ。

■困難脱却には情報集めが重要

 今後は、減免制度の対象条件も厳しくなり、介護施設の利用料も高くなっていくのだろう。
 NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事長の大西連さんが言う。

「日本の貧困率は15%ぐらいですが、高齢者の貧困率は25%くらいです。今、世の人が思っている以上に低所得の高齢者が多い。それを支える現役世代の負担は大きくなる一方です。ただでさえ多くない収入がさらに減れば生活破綻にもつながりかねません」

 国は、施設ではなく在宅での介護を勧めている。それはすなわち家族の負担が大きくなるということだ。

「国は家族を当てにしすぎています。公的支援をもっと充実させ、『家族は精神的なケアぐらいで十分』となるのが理想です」(大西さん)

 鈴木教授もこう強調する。

「このままだと介護保険制度が始まる前の家族介護中心の時代に戻ってしまいかねない。家族介護者への支援策として一番手っ取り早いのは現金給付です。ドイツでも韓国でもしています。介護労働力が不足するなかでの切り札なので、まさに今やるべき政策です」

 とはいえ、社会保障費を減らして家族に負担を押し付けたい国が、さらなる手厚い支援をするとも思えない。

 淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は、

「家族介護中の人には、国民健康保険と国民年金の支払いを免除するなど出費を抑える国の支援が望ましいと思います」

 との考えを示した上で、

「介護にかかわる人的資源は限られているものの、優れたケアマネジャーや相談員に出会うことで、困難な状況から脱却できる的確な方法を見つけてもらえることもあります。経済的に厳しい世帯こそ、いろいろな人に聞くなどして情報を集め、優れた専門家を探したほうがいいでしょう」

 だれしも避けたい介護破綻。だが、だれにも起こり得る可能性があるということも頭に入れ、備えたい。(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2020年11月27日号より抜粋