菅義偉首相 (c)朝日新聞社
菅義偉首相 (c)朝日新聞社

「デジタル庁」の創設や携帯電話料金の値下げ、地方銀行の再編……。アベノミクスの“継承者”を自任する菅首相が掲げる施策は、国民受けしそうなテーマが目立つものの、いずれも国の将来ビジョンをどう描いているのかが見えにくい。

 その最たるものが、10月26日の所信表明演説で打ち出した「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする」という野心的な目標だ。これまで日本は、50年までに2013年度比で80%削減をめざしてきたが、これを早めた。環境問題に熱心な公明党の主張を取り込んだとされる。

 すでに120以上の国・地域がこの目標を掲げて動き出しており、次期大統領就任が確実となったバイデン氏のもとで米国も、世界の潮流に加わるとされる。日本も遅ればせながら世界標準に足並みをそろえた形で、一定の評価はされた。

 だが、この目標は、30年後までの“努力目標”といった生やさしいものではない。経済や社会のあり方を根本的に大変革するものであるからだ。しかし菅首相からは、大変革を伴うことになる強い決意や説明はなされていない。

 第一生命経済研究所の野英生首席エコノミストは「国際的にもやらないといけない」としつつ、具体的な部分があいまいだと指摘する。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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