「実現に向けては再生可能エネルギーなのか、原子力発電の活用なのか。再生可能エネルギーを進めるならば、コストがなかなか見合っていない。これを普及させるため、補助金に依存するのか、電気料金など公共料金を上げるのか、整理されていません」

 環境NGO「気候ネットワーク」によれば、菅首相のゼロ目標を実現するためには、日本の電力の約3割を担う石炭火力を30年までにゼロにする必要があるという。

「『とりあえず日本も言った』という程度で、質的にも、覚悟の面でも、わからないレベルの発言」と平田仁子理事は断じる。

「50年の目標だけでなく、累積排出量が大事で、30年までに世界が半分まで減らさないといけません。これからの10年が決定的に重要です。優先的に着手しないといけません。どのように負担を小さく進めていくかが求められています」(平田さん)

 欧州は、環境政策を「グリーンディール」という成長戦略に位置付けている。長期予算や基金などの巨費を、化石燃料の依存の高い地域への支援や、関連労働者の転職対応などに充てる。

 一方、日本では炭素税などコストをかける議論が進んでいるわけではない。むしろ、化石燃料を組み込んだ経済や社会の構造が定着している。脱・石炭火力を進めるには、エネルギー業界のあり方を含め、関連業種への影響や雇用問題まで一体的に変えていかねばならない。

 わが国のリーダーは、いつになったら将来像を語ってくれるのだろうか。(本誌・西岡千史、浅井秀樹/今西憲之)

週刊朝日  2020年11月27日号

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今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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