※写真はイメージです (GettyImages)
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国公立大学教育学部系志願倍率推移(週刊朝日2020年11月20日号より)
国公立大学教育学部系志願倍率推移(週刊朝日2020年11月20日号より)

 コロナ禍での長時間労働などで「ブラックな職種」として敬遠されている教職。中学、高校教員は慣れない消毒やリモート作業などで疲弊している。教育学部の志願者数も都市部では減り続けている。一方、地方ではコロナ不況による民間企業の採用控えで人気の復活の兆しがあるという。

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 既に定着した「教職はブラック」という労働環境に加え、新型コロナウイルスの感染対策、ICT(情報通信技術)教育化が加わり、ネット環境が脆弱な公立校の教員はさまざまな苦労を強いられている。

 国公立大学教育学部系志願倍率は2011年以降低下し、近年は4倍前後だ。教育学部人気について、駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんはこう説明する。

「1974年に田中角栄内閣が、一般の公務員より教員の給与を優遇することを定めた『人材確保法』を公布。5年間で段階的に給与の改善を行ったため、あの当時は教員志望者が多かった。しかし、90年代に学級崩壊、2000年代には理不尽なクレームを言うモンスターペアレントが話題になりました。近年は教育を取り巻く厳しい環境のため、教育学部の人気が低下しています」

 教育学部の人気は、景気に左右される。

「景気が悪いときには、安定した職業である教員が人気になります。10年に志願倍率が上昇したのは、リーマンショックによる経済不況の影響です」(石原さん)

 では21年の動向はどうなりそうなのか。模試の志望動向を見てみよう。

 9月に実施した第1回駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試の受験者数は約40万人。コロナ禍の影響もあってか前年より3%減少し、教育学部の志望者も6%減少した。

「昨年は前年より8%減だから、昨年よりは少し教育学部の人気が戻ったと言えそうです。小中学校の教員の負担が重すぎるため、大都市部では教育学部志望者は減少しています」(同)

 近年、毎年のように教員採用試験の志願者数が減っていたが、今夏はどうだったのだろうか。まず、大都市である東京と大阪の志願者数を前年と比べてみよう。

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