関電は、第三者委員会(委員長=但木敬一・元検事総長)を設置。そして今年3月、第三者委が次のような報告書をまとめた。

<金品を受け取ったのは75人で、総額3億6千万円相当。関電が森山氏の関係企業に工事を事前に約束し、実際に発注していた。森山氏は見返りを目的に金品を配っており、原発工事などの代金が役員らに還流していた>

 但木委員長は旧経営陣の善管注意義務違反などの法的責任について明言を避け、問題は「区切り」を迎えたと思われた。

 だが、問題は事実解明では終わらなかった。

 関電の監査役会が取締役責任調査委員会(委員長=才口千晴・元最高裁判事)を立ち上げて、法的責任や損害を認定。関電はこれを受けて6月16日、八木氏や岩根氏ら元取締役5人に対し、計19億3600万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。冒頭の旧経営陣による答弁書提出は、まさにこの“対抗措置”だった。

 法廷外での神経戦も続いている。

 旧経営陣5人の1人で、社長や会長を歴任し、社内に強い影響力を持つとされる元相談役の森氏が7月13日、社外取締役の友野宏氏に一本の電話を入れた。

「(関電の訴訟代理人2人について)弁護士会に懲戒を申し立てることを予定しており、そうなれば世間を騒がせることになる。現段階で交代させるほうがよい」

 関電が大阪地裁に提出した書面によれば、こう告げたとされている。

 6月に関電の社外取締役となった友野氏は、訴訟対応を担う監査委員長に就いたばかりだった。友野氏は新日鉄住金(現日本製鉄)の社長などを歴任。11~13年には、関西財界の中心となる「関西経済連合会」で会長の森氏を副会長として支えた。そもそも森氏と友野氏は同じ京都大学工学部の先輩・後輩でもある間柄だ。

 森氏側は、関電の代理人2人が法的責任や損害を認定した取締役責任調査委員会の委員だったことを問題視。「利害関係のない社外の弁護士であると信頼して、不利な事実であろうが包み隠すことなく事情を説明した」「中立・公正ないわば『裁判官』としてヒアリングに応じた人物が、実は『検察官』であった事態を到底容認できない」と訴えていた。

 森氏が友野氏へ“直電”したのはそんな最中のことだ。関電側はこれに対し「弁護士を降ろすよう圧力をかけてくることはきわめて異常で甚だ遺憾だ」と批判。これに対し森氏側は、友野氏に弁護士の解任を求めた事実はなく、事前の情報提供の意図だったと反論している。

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