六代目山口組組長の篠田建市組長(C)朝日新聞社
六代目山口組組長の篠田建市組長(C)朝日新聞社
指名手配された絆會ナンバー2の金澤成樹こと金成行容疑者
指名手配された絆會ナンバー2の金澤成樹こと金成行容疑者

 長野県宮田村の飲食店駐車場に9月28日夕方、銃声が響いた。

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 撃たれたのは、六代目山口組傘下に入ったばかりとされる竹内組の四代目・宮下聡組長。長野県警は現場から逃走した絆會(旧任侠山口組)ナンバー2、若頭の金澤成樹こと金成行容疑者を指名手配した。

 2017年4月、神戸山口組から分裂した絆會。織田絆誠会長は記者会見まで行い、新しい組の旗揚げを表明。だが、勢力拡大とはならず、今春から解散の噂が何度も流れた。時を同じくして絆會から、六代目山口組に移籍した複数の組があった。

 それでも絆會は踏みとどまり、解散には至らなかった。織田会長は側近で絆會きっての実力者とされる金容疑者をナンバー2に起用して、組の再興を図った。

 一方、金容疑者は自分が組長だった竹内組から離れ、今回、銃撃した宮下氏を組長に指名していた。つまり、金容疑者はかつて後継指名し、組を任せた組長を銃撃したことになる。

 長野県では昨年夏から、六代目山口組傘下の組と、竹内組の抗争が続いていた。その理由について捜査関係者はこう話す。

「六代目山口組と神戸山口組が分裂して以降、長野県では六代目山口組と絆會が何度も衝突していた。春から六代目山口組入りする組がかなりあった。その流れもありこの日、竹内組は六代目山口組に加わることになっていた。朝から名古屋方面から組員が何人も駆けつけていた。それは、金容疑者にとって、想定外だった。絆會の本拠地は実質的に長野県となり、再起を期すことになっていた。そこへ昨夏から対立する、六代目山口組入りというのは乗っ取られるようなもの。何度か宮下組長と話したが、埒が明かず、居場所がわかったため、銃撃に及んだとみられる」

 これまで数々のヒットマンの弁護を手掛けてきた、元山口組顧問弁護士の山之内幸夫氏はこう話す。

「親分が跡目を継がせた子分を自らがヒットマンとなって、銃撃するというのは、あまり聞いたことがない。前代未聞だ。小説にもなりますよ。私は、絆會の織田会長とも何度か話してきました。去る者は追わずというタイプのように思えます。一方でヤクザとしてのメンツは重んじる。新たに絆會ナンバー2となった金容疑者は、織田会長についていくことを決断していた。そのメンツをつぶされ、やむにやまれず、ヒットマンとして走ったのではないか。一方、撃たれた宮下組長。今後、ヤクザとして生きていくためには、六代目山口組大きな組織に頼りたいという思いがあったのでしょう」

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