インテリアデザイナーは年下の男性と付き合うことで自分のずる賢さを痛感する。新しい関係は未知の自分に光を当ててくれるという。

 金原さんにとって小説の執筆とは?

「グチャッとしてドロドロとどこかに行ってしまいそうなものを、枠を作って一つの秩序に当てはめてあげる感覚です。普段、思っていること、感じていることを物語という形にすることは整理整頓になるのだと思う」

 自分自身を救うために享受してきたのが小説と恋愛だった。

「小説がなかったら自分のこともつかめなくて不安なまま生きていたんじゃないかなと。今もわりと不安なんですけど、すんでのところで自分を形成できているのは、小説を書いているおかげだと思います」

(仲宇佐ゆり)

金原ひとみ(かねはら・ひとみ)/1983年、東京都生まれ。2003年、『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー。翌年、同作で芥川賞、10年、『TRIP TRAP』で織田作之助賞、12年、『マザーズ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。

週刊朝日  2020年10月9日号