はせがわの屋内墓苑(納骨堂)の一つ、千日谷浄苑=同社提供
はせがわの屋内墓苑(納骨堂)の一つ、千日谷浄苑=同社提供
家具メーカーと共同開発した仏壇=はせがわ提供
家具メーカーと共同開発した仏壇=はせがわ提供

 コロナ禍は「あの世」との向き合い方も変えた。外出自粛で墓参り代行や法事のオンライン化などが普及。増加に拍車がかかる墓じまいとあわせ、このお彼岸にコロナ後のお墓と供養のかたちを考えよう。

【写真】家具メーカーと共同開発した仏壇

 変わりつつあるのはお墓参りだけではない。コロナ禍が長期化すれば、地方の実家近くにある墓そのものを自宅近くに改葬したり、整理して更地に戻したりする「墓じまい」も増えると思われる。栃木県で自営業を営む60代の男性は、こんな悩みを明かす。

「私は末っ子ですが、妻が一人っ子なので、関西地方の義父母の墓をどうするかをこれから考えないと。コロナのこともあるし、毎年墓参りのため帰省する負担を考えるとこちらに引き取りたいが、向こうに住む義父母の親類がどう考えるか……」

 男性は大阪出身だが、大学卒業後に勤めていた都内の企業で妻と知り合い、結婚。40代で独立し、以来、栃木県に住んでいる。2人の子どももすでに独立。夫婦の墓を県内に建てて義父母もそこに改葬しようと思っているが、墓の扱いを夫婦だけで決めてよいものか不安に感じているという。

「妻も私も向こうの親類と長い間連絡を取っていませんが、勝手に墓を移したら嫌がられるかもしれない。でも話を切り出すのも気が重くて」(男性)

 コロナ禍の前から、「墓じまい」は増加している。厚生労働省によると、直近のデータである2018年度の改葬(墓じまい)件数は11万5384件と過去最高で、前年度から1割増えた。墓石の販売や霊園の開発などを手がけるイオ(東京都千代田区)の上野國光社長は、「墓じまいに関する相談は、コロナ下でも引き続き多い」と話す。

「墓じまいの増加傾向はコロナ後も続いています。他の墓地に引っ越すよりも、墓を整理して、同じ墓地内にある永代供養型の合同墓に移るケースが多い印象です。子や孫の世代にまで遠方にある先祖代々の墓を管理させる面倒をかけたくないと考えている方が増えているようです」

著者プロフィールを見る
池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

池田正史の記事一覧はこちら
次のページ