桂子さんは、本誌にもたびたび登場している。2017年5月には林真理子さんと対談し、24歳年下のご主人との結婚や、過去に未婚で2人の子供を出産したことなどを語った。婚姻届が戦後のどさくさで受理されていなかったとか、相手が“ヒロポン中毒”だったので別れたとか、赤裸々だった。

 16年には、生涯現役を支えた食事のこだわりを披露。「江戸っ子なもので、しっかりした味付けじゃないと嫌みたいで。減塩なんて気にしてません」と語り、晩酌でも「お酒は常温。毎日いただきます」。そして、「こっちも老け込んでなんぞ、いられませんよ」と意気込んでいた。

 こちらもデビュー60年超の大ベテラン、双子姉妹歌手「こまどり姉妹」の2人は「たまに浅草の街で偶然ばったり、ということもありました」と振り返る。

「桂子さんがたしか戸越銀座(東京)で公演をやられた時にご一緒させていただいたこともあります。普段の活動する場所は違いましたから、その時のことはとても印象に残っています。みなさんが抱かれているイメージそのままの、素敵な方でした」

 漫才協会による「漫才大会」の構成を手がけたこともある、江戸川大学の西条昇教授(大衆芸能史)は次のように語る。

「桂子・好江はチャキチャキしているけれど決して下品にはならず、明るくにぎやか。登場するだけで舞台がパッと明るくなるような存在でした。好江さんがポンポンと面白いことを言っていき、それに対してあきれたような表情をうかべたり、ツッコミを入れたりする。2人の個性の面白さが持ち味でした。お弟子さんたちにはその芸風を受け継がせるのではなく、人間性も含めてそれぞれの個性を伸ばしながら育てられていました」

 若手のころから、時事ネタに敏感だった桂子さんらしく、10年からはツイッターにも精力的に挑戦。ここでもやはり小気味よく世相を斬って人気を集め、フォロワー数も49万人超の“人気インフルエンサー”でもあった。

「人生経験を積み重ねた人でないと出ない重みや深みがあり、しかも偉ぶった語り口でもない。そこがSNS世代の若者にも響いたのではないでしょうか」(西条教授)

 桂子さん最後の投稿は、緊急事態宣言が出されて約1週間となる4月14日。営業自粛を余儀なくされるなか、商売をやめてしまう店が出てきたことを憂えた。投稿は、こんな一文で締めくくられていた。

<まだまだ色んな手当てに届かない小さな店が沢山ある。>

 この先の世の中をどんな目で見て、言葉にしてくれただろうか。残念ながら、それはかなわぬこととなった。 (本誌・太田サトル)

※週刊朝日オンライン限定記事