ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
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 このところ、「失政」続きのトランプ氏。ところが11月に行われる米国大統領選挙に関する調査では、民主党候補のバイデン氏に肉薄している。その理由を、ジャーナリストの田原総一朗氏が米事情通の話をもとに解説する。

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 今、世界中が最も注目しているのは11月に行われる米大統領選挙である。トランプ大統領が再選するのか。それとも民主党のバイデン前副大統領が当選するのか。

 4年前の大統領選挙で、トランプ氏は当初は共和党でも泡沫候補として扱われていた。本選挙投票間際になっても、民主党のヒラリー・クリントンが当選すると米国のほとんどのマスメディアが思い込み、日本でもそう見られていた。

 ところが、決定的とも思われた予想を破って、トランプ氏が当選した。トランプ氏はそれまで、どの大統領候補も、というよりどの政治家も言わなかった本音の本音を“公然”と言ってのけた。

「世界はどうなってもよい。米国さえよければよいのだ」

 第2次大戦後、米国は世界に抜きんでて豊かな大国になり、第2次大戦で全土が戦場になった欧州の復興のため、そしてアジア諸国の復興のために、大変な額の資金を使い、さらにソ連との冷戦から西側諸国を守るために、大量の軍隊を派遣してきた。

 そして冷戦が終わると、グローバル時代となった。グローバル化とは、ヒト・モノ・カネが国境を超えて、世界市場で活動するようになることだ。

 米国は人件費が世界一高いので、多くの企業が工場を人件費の安いメキシコや、中国を含めたアジアの国々に移すようになり、米国の旧工業地域は廃虚化した。当然ながら失業者が多くなり、しかも世界のさまざまな機関への出費は減らなかった。米国内で貧富の格差が大きくなり、一部の超富者に対して、貧者がきわめて多くなった。

 こうした中で、トランプ氏の本音発言が、特に生活レベルの落ちた白人層に支持されたのである。

 ただしトランプ氏は、反グローバリズムだけでなく、自分と意見の合わない幹部はどんどん解雇し、デモクラシーなんてクソくらえと言わんばかりの自己中心主義だ。しかも、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性が警察官に圧殺される事件が起き、黒人差別反対デモが全米に広がると、デモ抑止のために軍隊まで出動させようとした。

 こうしたことからトランプ氏の支持率が落ち、バイデン候補が優勢になっていると判断していたのだが、そうではないようだ。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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