小泉首相が強引に郵政民営化を実施しようとしたとき、当時の自民党には反対する議員も少なくなかった。そのとき、小池氏はわざわざ選挙区を変わって、郵政民営化反対の小林興起議員の選挙区に乗り込み、小林議員を落選させている。つまり、小泉首相に恩を売ったわけだ。小泉政権下では環境相、沖縄及び北方対策担当相に就任している。

 もしも、男性議員が小池氏のようなことをやれば、たちまち信用をなくして失脚することになるはずだ。小池氏の場合はなぜ功を奏したのか。

 それは、日本では男女差別がひどいからだ。小池氏は、その男女差別を見事なまでに駆使しているのではないか。小池氏に取り込まれて捨てられた男性政治家たちは、恥ずかしくてそれを他に言えない。女性に捨てられるということは、男性にとって情けないことだからである。言ってみれば、差別されている女性だからこそ駆使できるわけだ。

 ところで、小池氏が希望の党を結党して民進党と組んだとき、自民党は総選挙での敗北を覚悟していた。だが、小池氏の枝野幸男氏らリベラル派に対する露骨な排除発言により、希望の党は大敗した。当時、民進党の代表だった前原誠司氏に「なぜ止めなかったのか」と問うと、「彼女は怒ると怖いので何も言えなかった」と答えた。

 また、去年の秋、「小池さんと組む」と言った二階俊博幹事長に、「小池氏は自民党にとって敵ではないのか」と問うと、「けんかして負けるより、取り込んだほうがいい」と答えた。自民党に、小池氏に勝てそうな人物が見つからなかったようだ。

週刊朝日  2020年7月17日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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