パソコンを使って移住の相談を受ける担当者=長野県大町市役所 (c)朝日新聞社
パソコンを使って移住の相談を受ける担当者=長野県大町市役所 (c)朝日新聞社
人気移住地ランキング(2019年) (週刊朝日2020年7月3日号より)
人気移住地ランキング(2019年) (週刊朝日2020年7月3日号より)
コロナ禍で良かったこと (週刊朝日2020年7月3日号より)
コロナ禍で良かったこと (週刊朝日2020年7月3日号より)

 外出自粛やリモートワーク(在宅勤務)など、新型コロナウイルス感染拡大で広がった新しい生活様式により、暮らし方や働き方の価値観が大きく変わろうとしている。この機に人生を見直した人たちの話を参考にして、アフターコロナの人生設計を考えたい。

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「自粛生活をきっかけに、物欲のあり方が根本的に変わりました」

 こう話すのは、東京都内で大学講師として働く橋本由美子さん(50歳・仮名)だ。趣味は買い物。20~30代のころは百貨店に足しげく通い、洋服やアクセサリーを買い求めた。時にクレジットカードの請求額が月100万円を超えることもあった。

 3月以降はコロナ感染を恐れ、必需品を買い足す以外、自宅にこもる生活を続けた。あれだけ欲しいと思っていた洋服やアクセサリーへの購買意欲は、自然となくなっていった。

「今思えば、仕事のストレスを全てお金で紛らわせていました。お金があることで、かえって理性のタガが外れた状態になっていたのかなと思います」

 コロナ禍をきっかけに、これまでの価値観を見直したのは橋本さんだけではない。東京・吉祥寺に住む中山唯人さん(61歳・仮名)は緊急事態宣言下の5月、38年間勤めたテレビ局を早期退職することに決めた。

 報道や番組制作の現場で、忙しい日々を過ごしてきた。だが、在宅勤務が始まると、考えが変わった。地元で過ごす時間を生かそうと、吉祥寺の飲食店でランチを持ち帰っては自身のブログで感想を書いた。コロナに負けないでほしいという応援の意味を込めた。

 ゴールデンウィーク明けに社長から関連会社への出向を打診され、少し考えた末に退職の意思を伝えた。影響を受けたのは作家・五木寛之氏の「林住期」という考え方。50~75歳のライフステージを「林住期」と位置づけ、金銭的な対価より自分の興味関心を重視して生きることを提唱したものだ。

「在宅勤務を通じて、自分がしたいと思ったとおりのことができるのは、こんなにも幸せなのかと気づきました。今後の人生は、関心を持ったテーマについて勉強したり、街で気になる場所を訪れたりすることに時間を割きたい、という気持ちが勝りました」

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