「『中の中』までいったら、昔の感覚でいえばちょっとアッパーな気持ちになれる、そういう時代になりつつあるのかもしれません」(同)

 1億総中流時代は「中の中」が6割程度と断トツだったが、下流化がどんどん進み、社会全体が下方向にシフトダウンしているということなのか。

 三浦氏は、このほど上梓した『コロナが加速する格差消費』(朝日新書)の中で、新しい格差論とそれに基づく分析結果を論じている。同書は、三菱総合研究所が毎年行っている3万人を対象にした大規模調査「生活者市場予測システム」の最新の結果をもとに、世代ごとに階層意識や消費意識を探るものだが、格差論でいえば同書での「公務員」という職業に対する分析が興味深い。

 どの世代でも男性は7割以上、女性は7割弱から8割強が「中の中」以上と答えている。特に1973~84年生まれの「氷河期世代」で夫婦ともに公務員である人は89%と9割近い人が「中の中」以上と答えたという。今や日本では公務員が上流なのだ。

「つぶれなくて利益やコストという観念もない、相対的に高収入で退職金も年金も高い、これだと、そうなっちゃいます。最盛期のJALみたいなものです」(同)

 公務員と真逆の結果が出たのが同世代の非正規雇用の人々だ。この世代は就職氷河期をくぐってきているが、男性の非正規は「中の下」と「下」の合計が75%を占めた。

「公務員を最近『上級国民』と呼ぶ傾向がありますが、氷河期世代の階層意識を見ると、対する非正規雇用の人たちは長期間続いた不況の中で、まるで『下級国民』のように扱われ続けたと見ることができます」(同)

 二極化の結果は人々の消費行動にも表れる。

 例えば自動車。三浦氏がよく使う言葉に「いつかはクラウン」がある。かつては階層アップと共にカローラから最後のクラウンまで乗る車もグレードアップした。それを表すトヨタ自動車の有名なキャッチフレーズだ。

「それが今では、明らかに上と下に分かれています。2千万円以上の外国車がどんどん売れる一方、数が出るのは軽自動車やリッターカーばかりです」(同)

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