新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となった演劇やライブイベントについて、9割以上の演者は出演料・キャンセル料をもらえない経験をした――。ショッキングな数字が、当事者らへのアンケートを通じて明らかになった。
調査をしたのは、俳優の西田敏行さんが理事長を務める日本俳優連合(日俳連)。俳優の権利拡大を目指し、出演条件や出演環境の整備を行う協同組合だ。アンケートは感染拡大が俳優・声優活動に招いた影響を把握するため、ウェブフォーム形式で実施。3月31日~4月7日の間に、880件の回答が寄せられた。
集計結果によれば、「2020年2月以降にキャンセルになった仕事はありますか?」という設問(複数回答可)に関して、回答者の74.4%が3、4月に「制作者などの判断でキャンセルになった仕事があった(ある)」と記入。さらに「(2月以降に)キャンセルになった出演作について、出演料またはキャンセル料の支払いはありましたか?」との設問に対しては、19.9%が「一部のキャンセルについて、出演料またはキャンセル料が支払われなかった」、76.3%が「(2月以降の)すべてのキャンセルについて、出演料またはキャンセル料が支払われなかった」と回答した。
設問への回答者のうち、実に96.2%が、本来受け取る予定だった報酬をもらえない経験をしたことになる。
自由記述欄では、
「公演の稽古で空けていた日が全て暇になった。演劇の公演が無くなったことにより頑張って宣伝して予約してもらったチケットも白紙。稽古に使った交通費は戻ってこない」
「夫も音楽関係で全てライブがキャンセルになり収入がない。子供もいる。アルバイトも見つけられない」
など、自身の窮状を訴える内容が数多く寄せられた。
日俳連で国際事業部長を務める森崎めぐみさんは、今回の調査を通じ、
「俳優という仕事の特殊さを改めて認識しました」
と話す。
「ほとんどの演劇やライブパフォーマンスでは、上映が『成果物』と同義。上映が中止となった場合、『納品がなかったもの』とみなされ、支払い自体がほごとなってしまう。そのためにかかっていた稽古代や交通費も飛び、出演者の家計が直撃されてしまうのです」