感染症対策の不十分さが発覚した厚生労働省 (撮影/多田敏男)
感染症対策の不十分さが発覚した厚生労働省 (撮影/多田敏男)
週刊朝日2020年4月10日号より
週刊朝日2020年4月10日号より
週刊朝日2020年4月10日号より
週刊朝日2020年4月10日号より
私たちができる自衛術 (週刊朝日2020年4月10日号より)
私たちができる自衛術 (週刊朝日2020年4月10日号より)

 勢いが止まらない新型コロナウイルス。感染症に対応できる病床の不足など、医療の弱点が浮かび上がってきた。現場の医師や看護師は奮闘しているが、人手不足は深刻だ。弱点を指摘されても厚生労働省が事実上放置してきたことなど、国の問題も発覚している。いま病院が危ない。

【コロナショックを乗り切る!私たちができる自衛術とは】

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「まだ調査の途中でまとまっておりません」

 厚労省の宮嵜(みやざき)雅則健康局長は3月3日の参院予算委員会で、小池晃参院議員(共産党)の質問にこう答えた。感染症対策について、総務省行政評価局から問題点を調査・改善するよう求められていたのに、2年以上対応できていなかったのだ。

 感染症患者は、専門家がいて設備の整った「特定感染症指定医療機関」(国指定)や「第一種、第二種感染症指定医療機関」(都道府県指定)に、入院する決まりだ。

 国や都道府県は一定の地域ごとに専門家の医師や入院ベッド数(病床数)を確保し、いざというときに備えることになっている。

 ところが、この指定医療機関において、医師や病床数の不足や、院内感染対策の不十分さが相次いで判明。計画通りの患者の受け入れを危惧するところが、調べた44機関のうち10機関(約23%)に上った。行政評価局は2017年12月、全国の指定医療機関の実態調査をして不備があれば改善するよう厚労省に求めた。

 厚労省は都道府県を通じて指定医療機関に点検を要請し、調査結果は18年中をめどに整理すると、行政評価局に18年7月に報告した。だが今になっても調査結果は報告されていない。加藤勝信厚労相は参院予算委で次のように苦しい説明をした。

「調査をしていないのではなくて、具体的な結果を踏まえてもう一度精査をしている」

 今回のコロナショックでは、指定医療機関の設備や人材不足など、様々な課題が判明している。もし行政評価局の求めにきちんと対応していれば、より充実した体制ができていたはずだ。

 延期が決まった東京五輪を巡っても、会計検査院が感染症対策について19年12月に改善を求めていた。外国人選手団を受け入れる自治体が感染症リスク評価を十分できていないと、指摘されたのだ。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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