ジョンさん夫妻らが手がけた族車 (撮影/加藤博人)
ジョンさん夫妻らが手がけた族車 (撮影/加藤博人)
米ロサンゼルスにあるピーターセン自動車博物館に展示されたスカイラインなど (撮影/加藤博人)
米ロサンゼルスにあるピーターセン自動車博物館に展示されたスカイラインなど (撮影/加藤博人)
米ロサンゼルスにあるピーターセン自動車博物館 (撮影/加藤博人)
米ロサンゼルスにあるピーターセン自動車博物館 (撮影/加藤博人)

 近年、アメリカでは空前の日本車ブーム。新車、旧車はもちろんのこと、過去に日本で走っていた「族車」と呼ばれる暴走族スタイルのクルマが注目されているのだ。それらは「BOSOZOKU」という一つのジャンルとして確立している。なぜ今、族車なのか。現場を追った。

【写真特集】族車が大ブーム 博物館で竹槍出っ歯、シャコタン展示

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 2018年秋。筆者は、米ロサンゼルスにある西海岸最大の自動車博物館「ピーターセン自動車博物館」を訪れていた。そこでは、日本車をクローズアップした「日本車100年の歴史展」という企画展が開かれていた。

 往年の名車を眺めていると、思わぬ光景を目にした。高級車やスポーツ車などとは違い、車体の色彩も形もひときわ異彩を放つクルマたち。

「え? なぜここに族車……」

 伝統的な暴走族のスタイルである「竹槍(たけやり)出っ歯」と呼ばれる装飾を施し、車高を落とした「シャコタン」にしていたのは、1980年型のトヨタ・クレシーダ(日本名:クレスタ)である。

 なぜ、そんな昔の族車がアメリカに渡ってきたのかと思ったら、アメリカで製作した車だと説明書きがあった。

 さらに驚いたことに、カスタムカー(特殊な装備を付けたり、改造したりした車)の展示エリアでは、様々なカスタムの種類について説明しているプレートがあり、その中にはこんな紹介があった。

「BOSOZOKU」

 日本ではすっかり廃れた暴走族の車が、アメリカではカスタムの一つとして分類されていたのである。

 族車が、歴史ある自動車博物館に、一つのジャンルとして飾られるに至った背景には、日本車人気の流れがある。

 近年、アメリカでは空前の日本車ブームとなっている。特に新車は乗用車、SUV、コンパクトカーの各カテゴリーで日本車が上位を占めている。2019年の新車販売ランキングにおいては、SUVでは1位「RAV4」(トヨタ)、2位「CR‐V」(ホンダ)、3位「ローグ」(日産)、乗用車は1位カムリ(トヨタ)、2位シビック(ホンダ)、3位カローラ(トヨタ)、4位アコード(ホンダ)と主力部門において、いずれも上位を独占している。

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