保育園児らの列に車が突っ込んだ大津市の交差点=2019年5月8日</p>

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保育園児らの列に車が突っ込んだ大津市の交差点=2019年5月8日
事故現場では多くの花がたむけられていた(2019年5月、撮影・粟野仁雄)
事故現場では多くの花がたむけられていた(2019年5月、撮影・粟野仁雄)

 大津市の滋賀県道交差点で昨年5月、右折した乗用車に衝突した軽乗用車が信号待ちしていた園児らに突っ込み園児2人が死亡、園児や引率保育士ら14人が重軽傷を負った事故で、乗用車を運転し自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)罪などに問われた新立文子被告(53)が2月26日付で、判決を不服として大阪高裁に控訴した。大津地裁は2月17日、「過失の程度、事故の結果は極めて重大」と禁錮4年6カ月(求刑禁錮5年6カ月)を言い渡していた。

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 この裁判、混乱した。全面的に非を認めていたはずの新立被告が途中から「直進者の過失も問うべきだ」と主張し判決が延期になった。保釈中にテレビ出演し「不運が不運を呼んだ。直進車がブレーキを踏んでいれば違う結果になったのでは」などと発言。遺族らから「反省もない。法廷で言ってることと違う」などの反発を招いた。シングルマザーの新立被告は出会い系サイトで知り合った男性を脅したというストーカー行為で逮捕され併合審理となったことでも注目された。

 滋賀県警は事故当初、乗用車で北上中に右折しようとした新立被告と、南に直進していた軽乗用車の62歳(事故当時)の女性の2人を逮捕した。しかし「軽乗用車は過失の度合いが少ない」と釈放。報道も軽乗用車の女性は「実名+容疑者」から匿名扱いや「さん」付け呼称になった。

 新立被告は「衝突音で初めて直進車(軽乗用車)に気が付いた」と、先に右折した車に漫然とついてゆき軽乗用車に全く気付かなかったことを認めた。現場の信号には右折指示もあるが、事故は双方青信号だけの時に起きた。

 被告の乗用車に衝突された軽乗用車の女性は「相手の車が止まってくれると思ったが急に右折したのでとっさにハンドルを左に切ってかわそうとしたが、間に合わず衝突した」と話していた。大津地検は昨年6月、直進した軽乗用車の女性を不起訴とした。法定速度の60キロ以内で走行しており、前方不注視もなく、青色信号で交差点を直進しようとしていたとして「刑事責任を問える過失は認めがたい」とした。

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