古市憲寿「親子だから仲良しとか、わかり合えるなんてウソ」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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古市憲寿「親子だから仲良しとか、わかり合えるなんてウソ」

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鮎川哲也週刊朝日
『奈落』を上梓した古市憲寿 (撮影/写真部・片山菜緖子)

『奈落』を上梓した古市憲寿 (撮影/写真部・片山菜緖子)

2020年の顔 1/2 (週刊朝日2020年1月17号より)

2020年の顔 1/2 (週刊朝日2020年1月17号より)

2020年の顔 2/2 (週刊朝日2020年1月17号より)

2020年の顔 2/2 (週刊朝日2020年1月17号より)

「普段から自己決定が大事だと考えているんです。生き方も死に方も、自分で決めたいんです」

【写真】ちょっと爽やか!20代の時に林真理子さんと対談した古市さん

 その言葉どおり、自由に発言をしてきた社会学者・作家の古市憲寿。ときに炎上することもあるが、それがスタイルでもある。

 しかし、自己決定が奪われたらどうなるのか。何も自分で決められない、何も自分でできない……。

 第3作となる小説『奈落』(新潮社)。人気絶頂のミュージシャン・香織はステージから転落する。目覚めると意識はしっかりあるが体が全く動かず、言葉を発することさえできない。目の前には大嫌いだった家族が優しいふりをして香織に接する。思いどおりにならない家族と自分への怒り、それでも生きなければならない香織の孤独が描かれている。

「親子だから仲良しとか、わかり合えるなんてウソだと思うんです。親子は、友達と違って自ら選んだ縁ではない。むしろうまくいかなくて当たり前なんじゃないかな」

 そんな人をはじめたくさんの人に読んでほしいと語り、続けた。

「年末年始で家族に向き合う人も多いでしょうしね」

 今の日本は家族に頼りすぎていて、家族に依存せざるを得ない社会のいびつさや家族の限界も描きたかったという。『奈落』の香織と家族の思いもすれ違う。

「僕たちの気持ちもそれぞれうまく伝わらないこともあります」

 言葉が失われた主人公像には、言葉の大切さを再認識してほしいという願いが重なる。

 そのうえで現代は声の大きな人の意見ばかりが通る時代だと危惧する。大きな声で発する人は言葉が発せない人のことをどれだけ思いやることができるのか。

「2020年は19年からの連続であって何か劇的なことも起こらないでしょう。自分も大きく変わらないと思います。ただ、そろそろ日本社会は危機的な現実に向き合う時期に来ていると強く思います」

 なんだ、ナナメから見る人かと思いきや、案外、アツイじゃないか、と記者は思った。今年もこの人の言葉に耳を傾け続けたい。

 芥川賞について尋ねると、

「そのために書いているわけではありませんから」と笑ってかわした。(本誌・鮎川哲也)

週刊朝日  2020年1月17日号


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