ですので、今回、みなさんと公演の感動を分かち合えるように、ちょっとした仕掛けと工夫を用意しました。

 まずは映画や演劇、ドラマを見るような気持ちで会場に来ていただきたいです。公演は、みなさんが感情移入しやすいように、「ダイナミズム」「パーソナルエモーション(感情)」「神秘的な存在」の三つのテーマに分けた構成にしました。大きな特徴は、映像とのコラボレーションです。

 演目の前に流す映像で、ダンサーが、「自分はこんな思いで踊るから、その場面に注目して欲しい」と見どころを説明します。本来バレエは、言葉のない芸術ですが、演目への理解を深めてもらう効果を狙いました。

 パート1の「ダイナミズム」では、黒鳥のパ・ド・ドゥ(男女のペアの踊り)など躍動感を強調した演目で構成しています。

 パート2は、「エモーション(感情)」を各自がどう表現しているかが見どころです。英国が誇る作家といえば、シェークスピア。ロイヤル・バレエ団の代表作品でもある「ロミオとジュリエット」からスタートし、平野さんと高田さんのペアは、ロシアの古典作品『春の水』を踊ります。

 高田さんの難易度の高い跳躍や、平野さんに向かって飛び込むリフト技など複雑な技巧が続く演目です。

 練習では、茜さんの元気が良すぎて、どこに飛んで行くかわからなかった(笑)。距離は決まっていますが、舞台でエキサイティングするといつも以上にポーンと……。

「どこに飛び込んでも、平野さんは受け止めてくれるから安心できる」と高田さんは笑っていますが、185センチの長身で安定感のある平野さんの技量があればこそです。

 実は、2人は20センチ以上の身長差があるので、普段組む機会は少ない。公演は、貴重なパ・ド・ドゥを生で見ることのできる機会でもあります。

 パート3の「神秘的な存在」では、平野さんが火の鳥のパ・ド・ドゥを踊ります。日本では手塚治虫氏による漫画『火の鳥』を読んだというお客さんもいるでしょう。神秘のベールに包まれた火の鳥を舞台上で、平野さんがどう表現するかを見てほしいです。

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デビューしたばかりの日本出身の若手ダンサーも出演