「山本被告は店長をやった経験から、鳥貴族では営業終了後、深夜の特定の時間帯に業者が商品納入のため一時的に防犯システムが解除されることを知っていた。その隙に、窃盗ができると発案してきました。あらかじめ、解除される時間帯に物陰に隠れて、業者が納品をしているタイミングを見計らって、店に侵入。業者が立ち去ると金庫のある場所はわかっているので、そこから盗むという手口です。
山本被告は『週末は売上金が多い』『ゆっくり動けば防犯システムは作動しない、警報音が鳴らない』などとても熟知していたので、何軒もの鳥貴族に忍び込めるんだとわかった。自分は見張りと業者の車が来たことなどをSNSで伝える役目でした。鳥貴族のような有名なチェーン店でも、盲点があるんだとびっくりした」(井上被告)

 年間売上高270億円(2019年7月)を誇る有名チェーン店の鳥貴族。警備は厳重なはず。連続して窃盗に入ることなど可能なのか。鳥貴族本社に聞くと、「被害にあったのはフランチャイズの店舗なので、そちらから回答します」という回答だった。

 そこでフランチャイズで2つの店を運営しているT社に取材を申し込むと、こう回答した。

「山本被告はうちのフランチャイズとなっている複数の店舗で5、6年ほど働いていた。複数の店舗で店長でもありました。現在、裁判進行中なので、詳細は申し上げられないが、セキュリティには万全を期して、二度とこんなことが起こらないようにしたい。元店長がこのような事件を起こしてしまい、残念でならない」

 検察は犯行が悪質で被害弁済がなされていないと、井上被告に懲役3年を求刑。防犯システムの盲点をついた犯行の代償はあまりに大きかった。
(本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事