世間に蔓延する上司の「お前のためだ」ハラスメント撃退法 (2/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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世間に蔓延する上司の「お前のためだ」ハラスメント撃退法

連載「督促OLの逆襲」

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榎本まみ週刊朝日
(c)榎本まみ

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 電話対応に慣れていない新人オペレータはどう返していいかわからず、しどろもどろになって固まってしまっていた。ロールプレイングを進めるうちにどんどん顔面は蒼白になっていき、見るからに痛ましい様子だった。

「ちょっとAさん! さっきのロープレなんなんですか!?」

 研修が終わった後、私はAさんを捕まえ声をかけた。けれどAさんは「え? なにか問題なの?」としれっとした様子だ。

「クレーム対応をロープレでやるっておかしくないですか? オペレータさん困ってましたよ」

「いやいや何言ってるの? 俺は新人オペレータのことを思ってやってるんだよ!」

「へ?」

 そのAさんのあまりに自信満々な態度に、私は再び驚いた。

「実際に電話を取るようになったらクレームはいっぱいくるだろう? だから、その時に困らないように、俺はあらかじめクレームの練習をしてやってるんだよ」

 Aさんはまったく悪びれる様子もなく「俺は親切でやっているんだ」と自信ありげな様子だった。そして驚き、固まる私を後にそのまま立ち去ってしまった。

 これは立派なパワーハラスメントだと私は思う。

 この業務はオペレータさんに不必要なストレスを与えているし、現にそれが原因で辞めてしまっている人もいる。そしてこの問題がやっかいなのは、Aさんが「お前のためだ」と思ってこの指導を行っていることだ。けれど世の中には、「お前のためだ」と言ってハラスメントをしてくる人が数多くいるのだ。

「世の中に出たらもっと辛いことがあるんだぞ」と言って厳しい指導をしてくる人。

「お前を鍛えてやってるんだ」と無茶な要求をしてくる人。

「お前は人間として甘い。俺がまともにしてやる」と言って説教ばかりしてくる人。

 そんな人が、あなたのまわりにいないだろうか。

 しかし、考えても見てほしい。「今は物騒だから、道を歩いているだけで殴られることがあるだろう。だからその時に備えてお前を殴っておく」と言って殴ってくる人がいるだろうか?


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