「思考力・判断力・表現力」というものは、強制されて身につくものじゃないだろう。むしろ、親の生活が安定し、子供が勉強をしたいならどこまでもできるという、普段の生活の余裕から生まれるものな気がする。

 親に金銭的な余裕と心の余裕があれば、子はいろいろな体験をさせてもらえる。親が生活の中で本を読んだりする余裕があるなら、家には本があり、子供も読むようになる。

 英語に関していえば、子供を留学させる体力がなくなっている親が増えてきていることが問題だろう。

 教師の労働環境の劣悪さも改善できない。大学の研究費もそれで儲かるかどうかで判断する。国が教育お金かけてくれないから、教える側も子供の親もカツカツで、余裕がない。それがいちばんの問題じゃ。

 格差が広がり、朝も夜も働いてぎりぎりの生活をしている人がいる。子にとって、親はもっとも身近な大人のモデル。生きるのに精いっぱいで、人は「思考力・判断力・表現力」を持てるのか?

週刊朝日  2019年11月29日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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