先の戦争は、天皇陛下を中心とする国家神道が利用された。天皇は神とされ、神である天皇に国民は従うべきだ、という同調圧力がすごかった。そうやって国民を支配した。

 安倍首相はまたその時代に戻したいのか? 災害が頻繁に起こるこの国、貧しくなっていくこの国。為政者として、「国のために我慢しろ」とだけ国民にいっていればいいなら簡単だ。そこで国民が文句でもいおうものなら、国に仇(あだ)なす人間、反乱分子として扱えばいい。「非国民」という罵(ののし)り言葉を使って。

 天皇陛下や上皇さまは、その時代への逆戻りを望んでおられないと思うがね。お言葉の数々に、「天皇陛下万歳!」といって自分たちを利用し、改憲を進めようとする人間たちへの反発が込められている。

 いっとくが、皇室を政治に利用することへの批判は皇室批判ではない。皇室を利用するものはそういう話にすり替えるが。

週刊朝日  2019年11月15日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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