林:それは素晴らしいと思います。今はマーケティングとか視聴動向の分析みたいなことが主流になってるんでしょう?

遠藤:そうなんです。それはそれで大切なものなんですけど、それはお料理の“ソース”みたいなもので、素材があって初めていい料理になると思うんですね。本当の素材の部分は、その人自身がおもしろがるとか、「これを絶対世の中に出したいんだ」という情熱だと思うんです。青臭いかもしれませんが。

林:番組の企画は、社長が決裁するんですか。

遠藤:番組に関しては、うちは伝統的に社長が決めるんじゃなくて、編成部長とか編成局長が決めてます。僕はそれでいいと思いますね。社長が番組を決裁するなんておかしいと思う。実際に私も35歳ぐらいで全部決めてました。「社長? わかるわけないじゃん」なんて言いながら(笑)。

林:へぇ~。

遠藤:実はうちの父もフジテレビの番組審議委員をやってたんですよ。

林:えっ、そうなんですか。

遠藤:父が審議委員をやっていた当時に編成局長だった日枝が、「今度おまえ(龍之介氏)の番組を番審にかける」って言うから、「それだけはやめてください」と言ったんだけど、当時のフジテレビですから、みんな「おもしろい、おもしろい」とか言って番審にかけることになったんです。堀ちえみさん主演のお針子のドラマなんですよ。

林:ええ。

遠藤:うちの父が番審の前の晩に委員の方々に電話して、「実はあしたうちの息子の番組が俎上にのるんや。あまり辛辣なことを言わんといてほしい」なんて言ったらしいんです。

林:まあ、おやさしい。

遠藤:ただ、ニューヨークに行っていた審議委員の森英恵さんだけには連絡がつかなかったようで。森さんは帰国したその足でフジテレビに来られて、しかも意見を言うトップバッターなんですよ。「アパレルの世界をあんなふうに描くのは、ほんとによくないことだと思います」とおっしゃったんです。2番目が父で「私は、あのドラマのプロデューサーは、ダイヤモンドの原石のような男だと思います」と言ったもんだから、ドーッと笑いが起こって、森先生は「えっ、なんで?」みたいな(笑)。

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