「作業員が防護服と防じんマスクをしていたのであれば、違法工事なのがわかっていたはずです。一般的な工事で防護服を使うなんてあり得ません」

 この問題は国会でも取り上げられた。6月の参議院内閣委員会で、宮腰光寛・内閣府特命担当大臣(当時)ら政府側は、「大変遺憾に思っておりまして、あってはならない」と繰り返した。

 こうしたあってはならないはずの保育・学校施設での石綿飛散は、繰り返されている。判明しているだけで、1999年の東京都文京区の保育園以降に7カ所に上る。

 ほかの公的施設でも飛散は起きている。18年には東京地裁などが入る東京・霞が関の合同庁舎で飛散が発覚。裁判所を訪れた人や職員らが吸った可能性がある。

 最高裁判所の大法廷でも石綿が検出され、2月から使用中止になっている。天井の一部に付着が確認されたのは約10年前で、飛散防止の対応が遅れたとの指摘も出ている。

■石綿の見落とし 全国147カ所

 環境省によると、14年以降に全国147カ所の改修・解体で、事前調査が適切にされず石綿を見落としたまま工事が始まっていた。都道府県などの担当部署が業者を調べたことで、問題がわかるケースも多い。不適正作業の「指導率」は17年度で17.8%に達する。これらは行政が把握できたものだけで、氷山の一角だ。

 規制に沿った事前調査が行われ、適正な作業がなされるはずだった工事でも、飛散する事例は少なくない。環境省が10年以降に全国計68カ所の除去工事を調べたところ、4割超の28カ所で外部に飛散していた。この調査は業者側に事前に通知しており、抜き打ちだと飛散事例がさらに増える可能性もある。市民団体「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」の永倉冬史・事務局長はこう警鐘を鳴らす。

「アスベストの相談に乗ってきた経験からは、大半の工事で何らかの違法性があると感じています。全国どこでもひどい状況です」

 さらに問題を深刻化させているのが、私たち市民に情報が隠されていることだ。不適正工事がいつどこで起きて、どのくらいの石綿が飛散したのかという最低限の情報でさえ、ほとんど公表されてこなかった。

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