

著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回は、エッセイスト・平松洋子さんの「コート ドール」の「冷製 梅干しと青シソのスープ」だ。
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毎年暑い時期になると、自然と体が欲して「食べたい!」と思い浮かぶのが、この冷たいシソのスープ。梅干しや青シソの葉が使われ、アボカドでとろみがつけられた斉須シェフの夏のスペシャリテです。かつて、フランスで研鑽を積まれたシェフが帰国後、日本人であることを意識して作られた料理だと聞きました。
いつもこのスープをいただくと、ひと口めで稲妻がピカッと光るような酸味を感じて、脳天に衝撃が走ります。頭が冴え冴えとして、それが1年間続くような感じがして──これ以上、酸っぱくても、アボカドのとろみがつきすぎてもだめ。斉須シェフが著書で「絹糸の中を渡るようなあやうさ」と、この料理を表現されていますが、まさに際(きわ)をゆく味です。しかも何度いただいても、新鮮さが減じない。めざすピンポイントに着地して、つねに衝撃を与え続けられる料理って、おいそれと出逢えるものではありません。唯一無二の一品に、つねに衝撃を受けています。
(取材・文/沖村かなみ)
「コート ドール」東京都港区三田5‐2‐18三田ハウス1F/営業時間:12:00~14:00L.O.18:00~20:30L.O./定休日:月、第2・第4火
※週刊朝日 2019年9月13日号