<秋刀魚焼く 匂の底へ 日は落ちぬ>(加藤楸邨)という句もあるように、サンマは秋の季語、風物詩でもある。牛窪さんは言う。

「旬の物には、心を豊かにするという効果もあるんです。IT機器に囲まれ、季節を感じにくい生活の中、なるべく自然や食べ物に触れ、季節の変化を感じたいと思うもの。特に近年は、春と秋が短く感じるような年が続いています。そういう側面からも、サンマの高騰は痛手です。農業のビニールハウスなどと違い、漁業は海が相手ですから、水温調整もまず不可能ですからね。代替品を食べればいいという意見ももちろんありますが、広い目で見れば、漁業に携わる方々の生活にも影響はあると思います。今後も、こういった問題がますます増えてくるのではないかと心配です」

 今後の漁獲量に期待したいところだが、秋サンマがゼイタクな一皿になってしまわないことを祈りたい。

(本誌・太田サトル)
※週刊朝日オンライン限定記事