稲垣:ソムリエ役を演じるにあたって、ソムリエの田崎真也さんの弟子だった広瀬一峰さんという方に、いろいろと教えてもらいました。そこからプライベートでもワインを飲むようになったんです。今よりもワインが安かったのもあって、広瀬さんに教わりながらいろいろ飲みました。

林:じゃあ高級ワインもたくさん?

稲垣:はい。今はすごく高くなって無理だと思いますが、それこそ高級ワインの代名詞として語られるロマネ・コンティ(フランス・ブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネ村にあるピノ・ノワール種の特級畑でとれるブドウから造られる赤ワイン)やシャトー・ムートン・ロートシルト(1855年の公式格付け以降、昇格を果たした唯一のシャトー)のワインなんかも飲みました。今思えばすごい贅沢な話なんですけど、昔、番組の景品で「100万円までだったら何でも買ってOK」という夢のような話があって。それで思い切って、僕の生まれ年(1973年)から、99年くらいまでのシャトー・ムートンを20本くらい買ったんです。今じゃ値段が高騰して買えないですけど、当時は今ほどは高くなかったから、まとまった数を買うことができて。

林:うわあ~。うらやましい!

稲垣:もらい物だから飲んじゃえって感じで、それを友達とかと「78年がいいね」なんて言いながら飲み比べたりしたんです。そうやってるうちに、ちょっとずつ覚えました。

林:すごい贅沢な経験ですね。テレビ局にもまだ潤沢にお金があった時代ですよね。

稲垣:はい。さすがにそれだけ続けて飲むと、得るものがありましたね。しかも同じ銘柄の年違いとかで飲んだから、すごく勉強になって。それが僕の中で大きかったです。その短期集中での原体験を今も大切にしています。本当に良いワインを飲んだときって、朝起きたときにも口の中に余韻が残ってるような感じがあるんですよね。

林:なるほど。一定量、飲まないと覚えないというのは確かにありますよね。それで言うと私の場合は、お金持ちで気前の良い人のところにすり寄っていって飲むというのが一番かもしれない……(笑)。よく言うんだけど、20万円のお金をくれる人はいないけど、20万円のワインを3本くらい平気で開けてくれる人って、世の中に結構いるのよね。不思議だなと思うんだけど。

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